妄想小説 長編(完結)
□遺志を継ぐ奴等
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「ったく、コエンマも人がわりいよなあ。ばーさんのこと生き返らせるために冷凍保存しといたなんてよ。埋葬したとか言ってたくせに」
幽助が机に足を乗せて、タメ息をついた。
「実はあれコエンマ様の考えじゃないんだよ」
後ろからいつもの声が聞こえた。
『ぼたん!!』
ぼたんが笑顔で後ろに立っていた。
しっかりセーラー服を着て。
「あんた達も三年生なんだねえ〜。ちゃんと進級できるなんて義務教育様様だねぇ!?」
「うっせ!」
「ぼたん、コエンマの考えじゃないって?」
会話を遮って、さっきの話に戻した。
「そうそう!実はね…」
『戸愚呂が!?』
戸愚呂がコエンマに幻海師範のことを頼んでたなんて…。
人間と妖怪はうまくいかない。
…あれは自分達のことを言ってたんだ。
でも…ちゃんとどこかで繋がっていた。
「……」
沈黙が流れる。
「こら!浦飯!桑原!さっさと席につかんか!」
沈黙を破ったのは竹中の怒鳴り声だった。
「…なんか久々」
「ん?君は?新入生か?」
竹中がぼたんを見て訊ねる。
ぼたんが慌てて教室から出ていった。
「じゃあ放課後また来るからねー」
放課後?
…また指令かよー。
『…かったりーな』
そう呟いて、席についた。クラス替えで私と幽助と和ちゃんは同じクラスになっていた。
たぶん問題児ひとまとめにしちゃおうってことなんだろうけど。
担任は竹中だし。
…受験かあ…。
竹中の話をぼんやりと聞きながら、進路を考えた。
放課後。
「何?あんた帰るの?」
幽助がこっそり教室から出ていこうとするのを捕まえた。
「ぼたんが来るっつってたでしょ!」
「かったりーからパス!ちょっとは休ませろってんだよ!」
幽助はそう言って、手をすり抜けて走って行ってしまった。
「…くっそー…。あたしだって約束があったのに…」
一人で教室で待っていると、和ちゃんが教室に入ってきた。
「おい、浦飯の奴なんか喧嘩しに行っちまったぞ?
ぼたんの話もう終わったのか?」
和ちゃんの言葉にタメ息をついた。
あいつの強さで喧嘩なんかするかー?
ったくもー…!!
「あれ?幽助は?」
教室に入ってきたぼたんが、教室を見回して聞いた。
『喧嘩』
二人の言葉にぼたんも大きくタメ息をついた。
「ま、香たちでもいっか」
「でもいっかって何よ」
「また俺巻き込むのかよ」
二人の言葉を無視してぼたんは話を始めた。
「コエンマ様も原因がわからないみたいなんだけど。どうやら変な能力を持った奴等が現れ始めているらしいんだ」
また妖怪?
「人間の中にね」
『人間!?』
私と和ちゃんは顔を見合わせた。
その時、廊下が騒がしくなってきた。
「?騒がしいね」
ドアを開けて廊下を覗くと、向こうからぷーちゃんが飛んでくるのが見えた。
「ぷーちゃん!?」
ぷーちゃんは私の胸に飛び込んできた。
ぷーちゃんを見て騒いでいた何人かが集まってきて、色々聞いてきた。
「それ浦飯さんの?」
「なんか動いてるけど、ペット?」
「なんの動物?」
ちょっと…!
誰かごまかして…。
そう思って固まっていると和ちゃんが大声を出した。
「俺のラジコンだー!さっさと散れってんだ!!!」
和ちゃんの声と怖い顔に、蜘蛛の子を散らすようにみんな離れていった。
…良かった。
「ぷーちゃん!駄目だろ!人前で飛んだりしちゃ!」
ぷーちゃんに怒るとぷーちゃんは手から離れて、黒板へと向かっていった。
そしてチョークをくわえて字を書き出した。
ゆうすけ、さらわれた
と。