妄想小説 番外編

□雨宿り
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梅雨が明けようとしてたから、油断してた。

いきなりのどしゃ降り。
ついてない。

香は下校途中、急な雨に見舞われた。
あわてて近くの公園の遊具で雨宿りをする。

カバかブタかわからないモチーフのトンネルになっている遊具。
久し振りにこの中に入ったなあ。

「そういえば…」



小さい頃もこんなことあったな。


確かあれは7歳の頃。


妹とケンカして、お母さんに怒られて家出したんだ。



あの頃なりに遠くまで家出したつもりだった。


一時間くらいここに隠れて、お腹すいたなって思ったら雨が降ってきた。



だんだん暗くなるし、雨はやまないし、お腹すいてるし、怖くなって…。




泣きそうになってると、目の前に人影が現れて。




「こんなところで何している?」


大きな目をした男の人が話しかけてきた。



私は何故かほっとして、我慢してた涙がぼろぼろ溢れてきた。

男の人は少し驚いた顔をして、泣くなと言った。



そしてこう言った。

「妹が泣いてるぞ。早く帰れ」




「どうしてわかるの?」


聞いてもその人は何も言わない。



「妹はずるいんだもん。
お母さんもお姉ちゃんなんだから優しくしなさいって私ばかり怒るの」

本当は帰りたかったけど、素直になれなかった。


その人は少し淋しげに見えた。

「姉が妹を守るのは当たり前だ。
意地張ってると、いつか会えなくなったとき後悔するぞ。」



「俺みたいにな。」




そう言って黙ってしまった。



雨はまだやまなかった。
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