妄想小説 番外編
□熱い男
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「うーっす」
あいつが教室に入ると皆が注目する。
「和さーん、宿題できた?」
「お、あの問5がわかんねんだよ。教えてくれよ」
奴は人気者だ。
入学式に地震を預言して以来、皆が奴に一目置いている。
勉強はそんなにできるタイプではないのに、周りに素直に聞いたりできるから、毎回少しずつだけど順位を上げている。
私は奴が苦手だ。
誰にでも同じ態度で接してくるあいつが。
私は一人が好きなのに、一人でいると必ずかまってくる。
きっと今も宿題が終わったら、こっちに来るんだ。
あ、ほら。
ほうらね。
「おっす。今日もしけたツラしてんなあ」
「ほっとけ」
「相変わらずだなあ。たまには笑っておはよーとか言ってみろよっ」
そう言って、こいつは私の背中を思いきり叩いた。
こいつには言い返せない。
いや、言い返すことはできるんだけど。
どうも真っ直ぐな正論をあの目で、あの話し方で言われると、お手上げなのだ。