妄想小説 番外編

□yes or no
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魔界トーナメントの後、鈴駆は流石と、酎は棗とそれなりに上手くやっているようだった。

凍矢は二人が幸せそうにしているのを見て、少し羨ましいと思っていた。
かつて自分にもそんな時があったと思い出し、懐かしく、そして切なく胸が痛くなった。





魔忍を抜ける時に置いてきた香の顔を思い出した。
香はいつも笑顔でいたはずなのに。
思い出すのは別れ際に見た、香の泣き顔だけだった。




あれからまだ3年しかたっていない。



どうしているだろうか。




「おーい、凍矢ぁー!」


陣が手を振りながら、笑顔で近寄ってきた。

「どうした?嬉しそうだな?」



「ゆ、幽助がよ!!こっちさ来るんだってよ!!」


「幽助が?…先日帰ったばかりじゃないか」

「もう俺たちに会いたくなったのかもな!早く会いてえなあ〜!!」


陣は幽助のこととなると、本当に嬉しそうに話す。
こいつの恋人は幽助なんじゃないかと思わせるくらいに幸せそうに。

凍矢は陣の笑顔を見て笑った。


「楽しみだな」

「ああ!」



陣の底抜けの明るさに、凍矢の切ない感情は吹き飛んでしまったようだった。






二日後、幽助が魔界にやってきた。


「尋ね人の依頼があってよー。ちょっと探しに来たんだよ」


魔界に来た理由をそう話した。

幽助は写真を一枚、みんなに見せた。



「おい!これ!!」


先に写真を見た陣が声をあげて、凍矢に見せた。
写真に写る人物に、凍矢の心臓はドクンと脈打った。



「ん?知ってんのか?」


「あ、ああ…」


幽助の言葉に陣は言いにくそうに答え、凍矢を見た。



「……香…」


写真の中の香は、笑顔でもなく泣き顔でもない、恐らく任務中の真剣な表情だった。
それは初めて見た顔だったが、少し赤みがかった茶色い髪に少したれた目も、あの香そのものだった。


あの日、泣かせた香。
そして、ずっと愛し続けた香だった。
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