妄想小説 番外編

□I am man
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幽助はいつものように学校をサボりパチンコを打っていた。
最近、幽助は毎日のように通っていた。

目当てはパチンコじゃない。

幽助はパチンコを打ちながらキョロキョロと辺りを見回した。




「こら!」


ふと後ろから声が聞こえた。
幽助は一瞬笑顔になるが、慌てて顔を作った。


「んだよ!」


内心嬉しいくせに、ふてくされたように振り向いた。

「ったく!中学生がパチンコなんかやるんじゃない」


ここの制服を着た香が腰に手をあてて怒っている。
幽助は香の怒った顔が好きだった。


「学校もさぼって!ちゃんと行かないと、あたしみたいになるよ?」


香はそう言って、幽助の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「ガキ扱いしやがって!」


幽助は香の手から逃げた。
香が自分を子供扱いする、それが幽助は嫌いだった。


「ガキが何言ってんの!んっとに!」


香はそう言って、また仕事に戻っていった。


てめえに会いにきてんだよ。


幽助は心の中で呟いて、少し照れた。
誰かに聞かれたかもしれない。
あり得ない考えなのに、ついその誰かに誤魔化すように舌打ちをした。





先に存在に気がついたのは幽助だった。
二ヶ月前、久しぶりに来たパチンコにやけに浮いてる店員がいた。
それが香だった。

店員はおばちゃんかヤンキーのどれかだったが、香は一人、そのどれにも属さない雰囲気をまとっていた。

最初は香に会うために通っているわけではなかった。
だけど、香がいるときは負けてもどこか満足していたし、いないときは勝っても何かがものたりなかった。


自分が香に対する感情に気がついたのは、初めて香と話した時だった。



「やめてください」


幽助の後ろで香が小声で言った。
幽助が振り返ると、香が客に絡まれていた。


「いいじゃねえか。連絡先くらい教えろよ、な?」


そう言って、客は無理矢理香の腕をつかんで引き寄せた。
香が客の体に寄せられた姿を見て、幽助は言い様のない怒りを覚えた。


「てめえ、何やってんだ!!」


気づいた時には客の顔をぶん殴っていた。
殴った瞬間、香に好意があると、気づいた。



あの日以来、香は幽助が来ると必ず話しかけるようになった。
幽助がまだ14だと知ってからは、今日のように叱るようになった。

そして時々、幽助を子供扱いするようになっていた。




確かに22歳からすればガキかもしんねえ。


幽助はそう思いつつも、やっぱり納得いかないと、タバコの本数が増えていた。
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