妄想小説 番外編

□SOMEHOW
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鈴木は悩んでいた。
三日前、香に頼まれて作っているものがなかなか完成しなかったからだ。

「あー…参ったな。天才に任せておけなんて言わなきゃ良かった…」

鈴木は100回目の失敗作を捨てながらため息をついた。



三日前。


「惚れ薬ぃ?」

「声がでかい!…作ってほしいんだけど、頼める?」

香は鈴木の口を手で押さえて辺りを見渡してから小さく言った。

「まー…たぶん…そういうのは作ったことがないから、たぶんとしか言えん」

「たぶんじゃ困るの!…でもそうだよね。鈴木でも無理なら仕方ないよね…」

香はそう言ってため息をついた。

「いや、無理とは言ってない!
…ちなみに誰に使うんだ?」

「…完成するかわかんないなら…言えない」

香はそう言って鈴木をちらっと見て、またため息をついた。

「なんだその態度は!
よおし!作ってやる!天才に任せておけ!私に出来ないことなどない!」

鈴木は香に向かって大きく胸を叩いて見せた。
香はすぐに満面の笑みを浮かべた。

「さっすが鈴木!!任せた!サンキュウ〜ゥ」

そう言いながら鈴木の頭を掴み、胸に押し込んでぎゅっと抱きしめた。

「…ちょ…わ、わかったから!おい!」

鈴木は慌てて香の腕の中から抜け出した。
顔を赤くしている鈴木をよそに、香は笑顔を見せた。

「じゃっ!よろしく頼んだ!」

そう言って香は手を振り帰っていった。

「ったく…。…惚れ薬ねえ…。
誰に使うのやら…」

鈴木は頭を掻きながら、自分の胸の中に何かモヤモヤした感情が芽生えたことに気がついた。
その気持ちの正体がわからないまま、鈴木は自分の研究室へと向かった。





「まさか今さら出来ないとは言えないしな…」


鈴木は今までの失敗作のデータを見ながら、またため息をついた。
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