妄想小説 番外編

□Feel The Fate
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「香遅い!試合始まっちゃうよ!」

「ちょっと待って!」

香は友人に急かされて、人混みを掻き分け、なんとか席についた。
友人に誘われた暗黒武術会。
出場ではなく観覧の方。
たまたま手に入ったチケットは裏御伽チームとゲストチームの試合だった。


「よく準決勝なんかとれたね」

香の言葉に友人は答えずにリングを指差した。

「ほら!見て!あの人!若様!」

「若様?」

目をキラキラさせている友人の指差した方には死々若丸という男が立っていた。


「今イチオシのアイドルよう!人間界の妖怪女子の間では知らない人はいないって!」

「あたし知らんかった」

「あんたは疎すぎ!」

「んー…あたし神田正輝のが好きだし」

「誰それ」

「聖子ちゃんの元」
「きゃー!!!!!若さまー!!!」

香の言葉は、歓声にかきけされた。
慌てて耳を抑えるが、つんざくような黄色い声援は嫌でも頭に響いた。


「…んもう、そんなに叫ばなくても…。
ってかゲストチームのあの髪つんつんのもなかなか…」

「はあ?本当香って男のセンスが悪いよね」

「失礼な。悪くないよ。
あの悪い目付きとか無口そうなのがいいよー」


そう話していると、ふと視線を感じた。

「え?」

「どした?」

「今…」


若様がこっちを見てた。


香はそう言おうとして、それを飲み込んだ。
あほかと一蹴されるのが落ちだとわかったから。

それに、自分でも勘違いだと思うほど一瞬の視線だったから。


だけど、その一瞬の視線が何故か心にひっかかり。
少しだけ胸が高鳴った。
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