妄想小説 番外編
□影法師
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「きっと急用ができたんだ」
一人で映画を観ながら小さく呟いて頷いた。
仕方ないことだ。
とはいえ、恋愛映画なんか一人で観てもくそも面白くない。
だけど、もしかしたら終わりまでには来てくれるかも。
そんな淡い期待を抱きながら、ハリウッド俳優のかっこいいキスシーンをぼんやり観ていた。
2時間19分の恋愛ストーリーは結局ハッピーエンド。
わかってたんだ。
ハッピーエンドなんてのは映画とかドラマとか、本の中の話だ。
二人で食べるための、ポップコーンは一人じゃ食べきれなくて、半分以上余っている。
舌打ちと一緒にゴミ箱に叩き込んだ。
どーすっかな。
…電話してみようか。
いやいや、もしかしたら何かがあって来れなかったんだとしたら電話しても出られないだろう。
仕方ない。
来週のあいつの誕生日プレゼントでも買いに行くか。
本当はこれがメインだった。
映画のあとで、ウィンドウショッピングしながら、さりげなくあいつの欲しそうな物をチェックするつもりだったのだ。
仕方ないから、勝手に選ぼう。
あいつは今なぜかカエルにはまってるからな。
カエルの人形みたいなポーチを手に取る。
「…かわいい…かあ!?」
あいつの趣味はよくわからん。
もう少し見て回ろう。
一軒目の可愛い入りにくかった店を出て、大きくため息をついた。