妄想小説 短編

□誕生日プレゼント
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黙々と作業を続けて、一時間がたとうとした頃、河嶋さんが話しかけてきた。

「南野くんってさ、かっこいいよね」


突然の発言に一瞬固まる。

「どうしたんですか?急に」

そう言って笑うと、河嶋さんも笑った。

「否定しないね」


そんなつもりじゃなかったんだが。

「まあ、自覚してますからね」


そう言うと河嶋さんは吹き出して、声を出して笑った。


「おかしいですか?」

「うっ…ううん…。いや、その通りです。ふふっ…。うん、かっこいいもんね」

そう言って笑いつづけた。
だけど、からかわれっぱなしは俺の性分じゃない。


「河嶋さんも、かわいいですよ」


にっこり笑って言うと、河嶋さんは顔を真っ赤にして絶句した。


そして何か言いたげな表情でこちらを見るが、ふいと黙って横を向いてしまった。


かわいいな。


河嶋さんはクラスの他の女子と違って、どこか大人びている人だった。

友達はあまり多くないようで、だいたい一人でいることが多い。

顔立ちが綺麗だから、惹かれてる男は多いようだが、まだ誰も告白とかはしていないようだ。

まあ、彼女のオーラがなかなか勇気を出させないんだろうが。

そんな所謂クールな彼女が、ちょっと言い返されただけで顔を赤くしてふてくされてるなんて。


いいものが見れたな。



再び作業を始めると、しばらくしてから河嶋さんが急に振り返って言った。


「あっあたしだってかわいいって思ってたし!」



「…へ?」


急に何を言うんだ、この子は。

彼女を見つめると、どや顔だった顔がだんだん赤く染まり、怒った表情に変わっていった。


「ぷっ…」

つい吹き出してしまった。
一度吹き出してしまうと、続く笑いは止められなかった。


「なっ…なんですか、急に…。ふふっ…いや、…いいんですよ?いいんですけど…っ」

笑ってると、彼女はまた拗ねてしまった。


「もう笑わなくたっていいじゃない!」


そう言えば言うほど、笑いが込み上げてくる。


クールだと思ってたけど、案外子どもっぽいんだな。


「もー!笑わないで!ほら仕事!!」


またそっぽを向いてしまった。
でも髪の間から見える耳は真っ赤に染まっている。



いじめがいのある人だな。


まだ小さな笑いがおさまらないが、作業を再開した。
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