妄想小説 長編(完結)

□三人組の盗賊・剛鬼
2ページ/5ページ

森の中では三人が宝を見て何か話している。

悪いこと考えてる顔だよ。

「あの髪の長い奴…なんか揉めてんな」

幽助が呟く。
確かに。
抜けるとかなんとか…。

「ややこしくなる前に行くか」

幽助が飛び出す。
私も幽助の後を追った。



「へいへい、仲間割れは後でやれよ。
その宝、こっちに渡してもらおーか」

幽助の言葉に、三人組は振り返る。


「なんだこいつらは」

はいはい、待ってましたよ。自己紹介!

「聞いて驚けよ!俺たちは霊界探偵の浦飯幽助様だ」

「あたしは浦飯香。神妙にお縄につきな!」



「霊界の追跡者か?」

「それにしても大した霊気を感じないな」


三人組のでかいのと小さいのが私と幽助を見て言い合う。

「ちょっと、馬鹿にされてんですけど…?」

「くっそー全然驚かねえ」




「まあ、とりあえずもめごとは避けておくか」

そう言って小さいのが木の上にひらりと飛び上がる。

「飛んだ?」

そう思った時にはもう奴の姿は消えていた。

小さいのに気をとられていると、髪の長い奴が何処かへ行こうとする。

「あっ!おい!待てよ!」

幽助が追いかけようとすると、でかい奴が幽助の前に立ちはだかる。


「俺は奴らと違って腰抜けじゃないんでね。
どうせ三人いっぺんには無理だろ?
俺が相手してやるぜ」


近くで見るとかなりでかい。
でかいだけじゃなくて、結構…かなりガタイがいい。

幽助も少し表情を固くした。


「その前に腹ごしらえだ。」

そう言うと奴は掌にボールを取り出した。
そこに指を入れると、半透明な何かを引っ張り出す。




私と幽助は黙って見てる。

「こいつは餓鬼玉っていうもんだ。
俺は剛鬼。魂を食って生きる妖怪だ。
今までは魂を食うには身体を引き裂かないといけない。
あんまりやると騒ぎになるし、死体は不味くて処理に困る。
その点こいつは便利だぜ?こうやって魂だけ吸いとってくれるからな」


そう言いながら、指先にある何かを見せつけた。


「それが魂…?」

「そうさ。さっき街で吸った子どもの魂だよっと」


そう言ったかと思うと、その魂を口の中に放り込み、喉を鳴らして飲み込んだ。

「ガキの魂は踊り食いに限るぜ。腹んなかでぐるぐる暴れてやがる」

『てめえ!!!』

その言葉に二人同時にキレた。


「吐き出しやがれ!このやろう!!」


幽助の拳が剛鬼の腹を捉えると、剛鬼は身体をくの字に曲げた。
口からさっき飲み込んだ魂が出てくる。

今度は私の脚を剛鬼の顔にくらわせる。
剛鬼は横に吹っ飛んだ。

口から吐き出された魂は、何処かへ行ってしまった。


「あれ、身体にちゃんと戻れんのかな?」

私は魂のいく先を見つめた。


幽助は剛鬼を見ていた。

「けっ!見かけ倒しだな、おい。おい、香。餓鬼玉回収してさっさと次の宝を…」

そう言って私の方を振り返った。


その幽助の後ろに影がせまる。

「幽助!」

幽助も同時に気配に気がつき、距離をとった。


完全に倒したと思った。
幽助も私も手加減無しで行った。
キレイに決まったと思ったのに。

剛鬼はそこに立っている。

「おいおい、おっさん。無理すんなよ」


「人間にしてはやるな…」

剛鬼はそう言うと、徐々に肉体を変化させた。
身体は一回り更に大きく、うっすらと見えていた角がはっきりと、大きく伸びた。
口は大きく、尖った大きな歯が見えている。

まさに鬼になった。




幽助も私も呆然と立ち尽くしてしまった。

そして瞬間、剛鬼の腕が空をきる。
とっさに後ろに避けたが、幽助の頬が切れて血が出ている。
私も制服が避けて、左腕に血が滲んだ。


その剛鬼の腕は、そのまま近くの大木を握りつぶした。
音をたてて木が倒れる。


「こんな化け物なんて聞いてないよ!」


「ケタ違いじゃねーか!」



ゆっくりと近づく剛鬼に、二人は思った。


『ま…まじでぶっ殺される!!』
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ