妄想小説 長編(完結)

□それぞれの修行
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「で…?私はあんたを守ればいいだけ?」


じーさんは少し考えて、私を見つめた。


瞬間、身体中の毛が逆立つような感覚に襲われた。
とっさにじーさんから距離をとる。
それ以上動けない。
動くと死ぬ。

そんな気がした。
冷や汗が吹き出す。
頬を伝って畳に一粒落ちる音が部屋中に響いた気がした。





「かっかっかっか!脅かして悪かった!」


じーさんが笑うと、ふっと嫌な気が消えた。

なんだ、今の。



「なかなかの反応じゃな。ワシの弟子でさえ最初は気絶しておったわい」



じーさんは呆然としている私に言った。


「お前さんに頼もう。
ワシの弟子を倒してもらえんか」








なんだか面倒なことになったっぽい。
じーさんに連れられて、道場に入る。
そこにはじーさんの弟子達がすでに集まっていた。

「師範!神聖な道場に女を入れるなんて!!」

弟子の一人が叫ぶ。

んだよ、女が汚ねーみてえじゃねえか。
奴を睨んでいると、じーさんがゆっくりと話始める。


「お前達に大事な話がある。
このおなごは浦飯 香 。
ワシの後継者じゃ」




へ?



私の動揺よりも、弟子達のそれが凄かった。

「何を言い出しますか!師範!」

「何十年と修行してきた我々になんという仕打ち!」

「冗談にも程がありますぞ!どこの馬の骨ともわからぬ女を後継者などとは!」


次々に弟子達の不満が飛び交う。
段々殺意混じりの霊気が強くなっていった。


おいおい、じーさん、聞いてないよー。
なんなんだよ、一体…。



「何を言っても決定事項じゃ。
ワシの考えは変わらん。
この香に全てを託す!
以上じゃ、解散!!」




じーさんが静かに、力強くそう言うと、弟子達は口をつぐんだ。
それでも殺意混じりの気は私にまとわりつく。
いや、私だけじゃなくじーさんにも向かっていた。



じーさんは私を連れて外に出た。

「おい、じーさん。どーいうことだよ」


「まあ、そのまんまじゃ。お主にはワシの後継者になってもらう」



「んなこと勝手に決めんな!あんな風に皆に言うから、すっげえ恨まれてんじゃねえか!
じーさんが殺される前に私が殺されるっつーの!!」



そう言うと、じーさんがニヤリと笑って言った。

「おぉ〜そりゃ大変じゃな。奥義を会得する前に殺されないようにな。
死んじまったら奥義は渡せないからの〜」



こ…こいつ!!
わざとだなっ…!


そんな私をほっぽって、じーさんは笑いながら部屋に戻ってしまった。



おいおい、弟子は30人いるんだろ?
まさかそれ全部相手しろって言うんじゃねえだろうな…。

弟子を倒せっつーからてっきら一番弟子だけでいいかと思ってたのによぉー。



その時、ぼたんに渡された電話がなった。

「やっほー!香、調子どう?盛霖さんとは上手くやってる??」


ぼたんの呑気な声を聞くと、気が抜ける。



「どーもこーもないって。なんかただの護衛かと思ったら、いきなり後継者にされた上、命狙われそーになってんですけど…」



「おやまあ、そりゃ大変だったねえ〜。
でも後継者になれたら今より強くなれるんだし、儲けもんだねえ〜。
頑張んなよっ!!」



ん?
この反応。


「…ぼたん、知ってたでしょ…」



「えっ!?な、なんのことー?おほほほ、あっ!幽助が危ない!じゃあ、また!頑張ってー!」



電話が切れた。


くそ、霊界の思惑どーりってことね。
まあ確かに、奥義を会得できるってのはおいしいけどさ…。



ま、どっちにしろ自分とじーさんの命を守ればいいってことだな。


なるよーになるか。


タメ息をついて、先に案内されていた客間へと向かった。
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