妄想小説 長編(完結)

□妖魔街からの挑戦状
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「あれが妖魔街かー」


数キロ先に空気のまずそーな街が見える。
街から離れているのに妖気を感じる。
これがぼたんの言ってた四聖獣の気か…。

街へ向かう三人の気も少し張り詰めた。


街へ入ると、なんかちっさいオッサンがわらわらと集まってきた。

「人間だ」
「女なんて久しぶりだ」
「うまそーな匂いだ」


なんかぶつぶつ言いながら襲いかかってきた。

「んだよ、こいつら!」

「数が多くてキリがねえぞっ!」

「誰だよ!さわんじゃねーよっ!」


確かに簡単に倒せるけど数が半端じゃない。


三人でモタモタ小さいオッサンを倒していると、遠くから声が聞こえた。


「こんな奴らに手間取ってたら、いつまでたっても城には着かないぞ」



声の方を見ると、二人組が現れた。

「手をかそうか」

そう言った男は…。




『蔵馬!飛影!』

幽助と二人、驚いて声をあげてしまった。
和ちゃんだけがきょとんとしている。


「なんであんたたちが?」
「君達に協力することで免罪も考慮されることになったんだ」

私が聞くと蔵馬がにっこり笑って答えた。
だから…その顔はやめろ。つい目を逸らしてしまう。

「そっか、コエンマのやろー粋なことすんじゃねーかっ!」

幽助がそう言って笑いながら、飛影の肩を叩いた。

「ふん」

飛影はそう言って目を逸らした。


「おい、浦飯。誰だよこいつら」

蚊帳の外だった和ちゃんがちょっと不満げに聞いた。

「蔵馬と飛影。説明は面倒だから省くけど、協力してくれるってさ」

簡単に説明したけど、和ちゃんはまだちょっと不満そうだった。


二人が現れてから、小さいオッサンが近づいてこない。
どうやら二人に恐れているらしい。
飛影はともかく、蔵馬もなんて…。
戦ってないからだけかもしんないけど、なんか蔵馬がすごい強いって感じしないんだよねえ…。
あの顔のせいで、毒気が抜かれる感じ。
戦う蔵馬…興味あるかも。

そう考えてると蔵馬が、ふっと笑った。

「何か?」

「え?あ、いやっ別になんでもないっ!」

やっぱりこいつ苦手だ!
ちょっと顔が赤い気がする。
あんな風に笑われたら誰だって照れるっつーの。

さりげなく蔵馬から距離をとった。



しばらく歩くと目の前に城の門があった。
長く続くトンネルがある。
「これが入り口か?」

「ま、進むしかないよね」



トンネルの中頃まで進むと前に変な妖怪が現れた。
目玉に羽の生えたちっこいやつ。


「ようこそ迷宮城へ。この城に入るには裏切りの門の審判を受けなければなりません」

変な目玉はそういうと、奥にあるレバーを下ろした。

その瞬間、五人の頭上の天井が音をたてて降りてきた。
五人同時に天井を支える。

…ぜ…全力ださなきゃ…潰れるっ!!


「その門は支える者の力を読み取りギリギリで堪えられる重さで重圧をかけます。一人でも力を抜けばぺしゃんといきますよ」

変な目玉は笑いながら続ける。

「一人が裏切り逃げれば残りは潰され、お互いを信じ力が尽きるまでいて全員で死ぬのもいいでしょう。
裏切り者だけがこの城に入れるのです」


変な目玉の笑い声が響く。
くそっ勘にさわる!
でも…このままじゃ皆つぶれる!


「幽助!あのレバーを上げれば…!」

「ああ…!…飛影!あのレバーを上げてくれ!!
俺らん中で一番すばやいのはおめーだ!!」

幽助が飛影に向かって叫ぶ。
確かに、飛影が一番速いだろう。

「浦飯!お前が行け!俺はそいつがどーも好かん!」

和ちゃんがまったをかける。

「和ちゃん!今はんなこと言ってる場合じゃ…!!」

私が止めるが、飛影が口を開く。

「そこのつぶれた顔の奴の言う通りだ。俺なんかを信用していいのか?」


それでも幽助は表情を変えない。
飛影を信頼してんだね。
私ものるよ。

「私達が全霊気を使えば、ちょっとの間なら大丈夫だと思う!」

「…頼んだぜ!飛影!!」


飛影は困惑した顔を見せながらも、一瞬でレバーの元に向かった。

幽助と私はマジで全力出して天井を支える。
それでも、和ちゃんと蔵馬にも負担は増えた。


「は…早くレバーをあげろー…!!!」

和ちゃんの声が聞こえる。
飛影は戸惑いのような表情でこっちを見ている。


変な目玉は飛影に囁いた。

「迷う必要などありませんよ?貴方ほどの犯罪者なら四聖獣の方々も喜んで仲間にしてくれるでしょう」



「てめえ!浦飯が信頼したのに裏切る気じゃねえだろうな!?」

和ちゃんがまた叫ぶ。


和ちゃんの言葉に飛影が笑った。

「ほとほと甘い奴らだぜ」

飛影?


「俺をなめるな!!」


そう言った瞬間、目玉の悲鳴が聞こえた。
そして同時に天井の重さが無くなった。


「止まった…!」


「奴らに言っておけ!お前らの方こそ命乞いをするなら、子分くらいにはしてやるとな!」


飛影の啖呵に目玉は悲鳴をあげながら城の奥に消えていった。



「いってー!血管切れっかと思ったぜ」

「もー飛影、ハラハラさせて!!」


「でも助かったぜ!サンキュな!」

幽助が飛影ににかっと笑った。
飛影は何となく戸惑った顔を浮かべた。

「別にお前らを助けたわけじゃない。
奴らを倒すまでは手を組んでいた方が俺にとっても都合がいいからな」



何?照れてんの?

私達がきょとんとしていると蔵馬が言った。

「彼流の礼のつもりさ。気にしないでくれ」


ふーん。
あれでねえ…。
でもまあ、ちょっと飛影の気持ちはわかる。
お互い、ひねくれもんだからね。



何とか門を通り抜けたが、城は広く、どこに行けばいいのかさっぱりだ。

「とりあえず、階段さがそうぜ。
悪の親玉は最上階にいるって相場が決まってる」


幽助の自信満々のセリフにタメ息がでそうだが。
まあ一理ある。
階段探そう。


その時、ぼたんから連絡が入った。

「やっほー、ぼたんだよ。とりあえず今はまだ目立った事件は起きてないよ。
意外ととりつく人間が見つからないみたいで、うろうろしてる魔回虫を何匹か殺したよ。
まだまだ人間も捨てたもんじゃないねえ」

ぼたんの報告に一安心するが、急がなきゃならないのはかわりない。



「先に進むぜ!」

幽助が足を早めた。
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