氷帝本すたいる

□ダブルス
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―日吉side―

「D2(ダブルスツー)日吉、向日。」

レギュラーメンバーが発表された時、今度こそ俺がS2(シングルスツー)で出場できると思っていた。

入学する前に見た跡部さんの試合。
全てが完璧で華麗なテニス。
俺は跡部さんを倒すために…下剋上するために氷帝学園のテニス部に入った。

なのに…俺がダブルス…?
しかも、よりによって向日さんとペア…。

あの人とは、どうもかみ合わない。
俺と正反対の意見をぶつけてくるから苦手だ。

「はい。」

俺は仕方なく返事をしたが、向日さんは無言だった。
ただ呆然とした顔でつっ立っている。
メンバー発表の後、俺は向日さんに言った。

「よろしくお願いします。」

「お前、ダブルスやった事ねーだろ。足引っ張んじゃねーぞ。」

「…はい。」

向日さんは呆れたような顔で俺に言葉を吐き捨てると、一人どこかへいってしまった。

練習出ないのか?
と、思いつつ俺はコートへ向かった。





コートへ着くと共に忍足さんに話しかけられた。

「日吉、岳人見てへん?」

「知らないです。」

「さっきから姿があらへんのや。どこへ行ってもうたんやろ。」

やっぱり向日さんの姿はなかった。
どこに行ったんだ、あの人…。

「俺、探してきましょうか?」

「ホンマか?助かるわ。」

「いいですよ。丁度アップ代わりにもなりますし。」

「堪忍な。頼むで。」

向日さんがいそうな所…って、分かる訳ない。俺はあの人に興味ないしな。

とりあえず屋上でも見に行くか。




 
ガチャッ

俺はゆっくり屋上のドアを開け、外へ出た。
見渡しても誰もいない。

「スーッ…スーッ…」

微かに音が聞こえる。
給水塔の近くから聞こえた音につられて、俺は歩いていった。

「スーッ…スーッ…」

「あ、芥川さん…?」

「スーッ…スーッ…」

相変わらずこの人はマイペースだな。
練習もろくに出ないし、出たとしても寝てばかりだ。

「芥川さん、起きて下さい。練習始まってますよ。」

「スーッ…スーッ…」

起きる気配が全くない。
そういえば、芥川さんの好物はポッキーだったはず…。

「芥川さんにポッキー持ってきたんですけどね〜。起きないから俺が食べ…」

「んん…んぅぁぁあああああっ!!!!!!!!!!ポッキー!!!!!!!」

「やっと起きた。」

「あれぇ?日吉?何やってんのぉ?」

「別に何もしてないですよ。向日さんを探してるんですけど、見ませんでした?」

「あぁ〜………。見たかもぉ。俺が屋上向かって階段昇ってる時に〜多分すれ違ったC〜。」

「すれ違ったって、階段下りていったって事ですか?」

「うん〜。多分。」

「ありがとうございます。」

俺は屋上から校舎内へ戻り階段を下りていった。




 
とりあえず下駄箱まで来たものの、向日さんの姿は見えない。

「あれ?若様〜!!何してるの?」

「鳳。そんなに荷物持ってどうしたんだ?」

「今までの試合や練習を記録した紙やノートを部活用ロッカーに運んでる途中でさ。」

「おい!!長太郎!!早く歩け!!」

「あ、宍戸さんいたんですか。鳳がデカすぎて見えませんでした。」

「なっ、何だと!?相変わらず可愛げねぇな、お前は。長太郎、行くぞ。」

「はいっ!!宍戸さん!!」

馬鹿リア充。
鳳と宍戸さんはデキてるって言うのは跡部部長から聞いていた。
でも、あの仲の良さはムカつく。

それより向日さんを探さなきゃ。

「若様ーっ!!さっき向日先輩裏庭で見かけたよー!!じゃ、また後で〜!!」

裏庭か。
あそこはめったに人が通らない所だけど…何故。

俺は色々考えながら裏庭に向かった。
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