氷帝本すたいる

□ビターチョコレート
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最近気付いた事がある。

俺はホモかもしれない。

アイツを見るとドキドキして、アイツに近づきたくてたまらない。
むしろ、あの白くて綺麗な肌に触れたいとさえ思う。

跡部景吾。

常識的に考えて、男が男を好きなんてのは有り得ない。
でも俺は、今その有り得ない状況にいるんだ。

自分の気持ちを伝えたい。けど、怖くて伝えられない。

これまで抑えてきた気持ちが、ここにきて爆発しそうになる。

―跡部…お前は俺の気持ちを理解してくれるか?―

心で呟いた。

その聞こえない呟きが、届いたかのごとく、コートで打ち合うお前がこっちを向く。

ドキッ

心臓が高鳴った。

跡部が俺の方へ歩いてくるが、身動きができない。

と思った矢先、俺をスルーして後方のベンチへ座り込んだ。

アイツは俺を見てた訳じゃなく、ただ休憩をするために向かってきただけだったんだ。

恥ずかしい勘違いをした。

急に顔が熱くなり、汗が滲み出る。

気づけば走り出していて。
自分を庇おうとしたんだ。

好きになることは悪い事じゃない。
たとえ、その相手が男だとしても。

何度も自分に言い聞かせる。

コート裏の水道で、乱暴に顔を洗った。

「珍しいじゃねぇか。」

ドキッ

鼓膜に絡みつくような低い声。
跡部だ。

顔をあげると、タオルを差し出されていた。

「サ、サンキュ…。」

「まだ軽くしか練習してねぇのに汗の量がハンパねぇな。」

「うるせぇ…」

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