薄桜鬼・妄想小説 long story

□原田左之助【恋情】
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―――ここは京の街



俺たち新撰組は、幕府にたてつく尊王攘夷派の取り締まりや、この町の治安維持の為に、毎日昼と夜の巡察や、何か起きれば駆け付け、その場の収拾に努めていた



だが、町民からは、人斬り集団と恐れられ、嫌な顔をされることがほとんどだった



唯一の息抜きといえば、酒を呑んでる時と―――――…





「…っあ…はっ…・・いぃっ…あっ……」



卑猥な水音と、厭らしい喘ぎ声だけが響く室内…


俺は、なにも考えず、ただ本能のまま、腰を突き動かす


名も覚えていないような女とただ単に体を重ねるだけの行為…


惚れた女もいない俺は、ほぼ来るもの拒まずといった感じで、一夜限りの夜を過ごすことが多かった


ただ、この行為の後に襲ってくる虚しさが、俺の心に空いた穴を、更に押し広げる様だった…



「…ねぇ、今日泊まっていかない?」



そう言って甘えてくる女の手を振り払い、支度を整え、なんだかんだ言ってくる女に向かって



「悪ぃが、今日は帰るぜ。じゃあな」



そう言って、その場を後にした





暗い夜道を一人、屯所へと向かう


ったく…俺は何をやってんだろうな…


何がしてぇのか…


こんな風に女を抱いても何も埋まらねぇってのに…


優しいって寄ってくる女がほとんどだが、女の扱いに慣れてるだけで、優しいとこなんかこれっぽっちもねぇのによ…



気晴らしに女抱いてる最低な男だぜ…俺はよ…



なんとなく、まだ屯所に帰りたくなくて、そのまま細い道に入っていく


しばらく歩くと、林道があり、その奥に一本の大きな桜の木がある場所に出る



前までは、たまにそこでくつろいだりしてたんだが、最近はほとんど行ってなかったから、なんとなく足が向いた



真っ暗な中、歩みを進めて行くと、前方に小さな灯りがひとつ、ゆらゆらと揺れている



…提燈の光か?


てことは、誰かいるのか?


少し警戒しながら、静かにゆっくりと距離を縮めていく



だんだんと光に照らされたその姿があらわになっていく…


まだ少し距離がある所で足を止める



…女?



光に照らされていたのは、長い髪をなびかせ、木の下に佇む女の姿だった



なんでこんな時間にこんな場所に女が一人で…?




その女が、手に持っていた何かを口に持っていくと、キラキラしたまるいものが、フワフワと舞い、暗闇に消えていく…



…しゃぼん…玉?



幾度となく吹かれるしゃぼん玉から、女の顔に目をやると、凛としたその瞳から流れている光の粒が、その白い頬を濡らしていた…


その周りを、時折吹く風と共に、桜が舞い散っていく…



その光景に、俺は全てを奪われた…



そこだけまるで、別の時間が流れているような、とても不思議な感覚が俺を支配する


そして、それ以上、その女に近づくことが出来なかった


俺が近付くと、そのままフっと消えてしまいそうな、儚げな姿…



俺の汚れた手で、女に触れるなんてことは絶対しちゃいけねぇ…そう思った…




しばらくして、彼女が去った後も、夢さめやらぬといった感じで、しばらくその場から動けなかった…









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