薄桜鬼・妄想小説 long story

□永倉新八【想い人〜すれ違い〜】
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そのまま、男を床に倒し、うつ伏せ状態で押さえつけ、身動きの取れない男に向かって



「だーかーらー、でけー声だすんじゃねーよ。騒がれたくないっつってんだろ?分かったら、さっさとこっから姿消せ」



そう言って、男を解放する



「ち、ちくしょー!!お、覚えてろよっっ!!」



よたよたと後ずさりながら、明らかに怯えているのに、まだそんな言葉を投げつける男



そんな男の頭を鷲掴みにし、不敵な笑みを浮かべる彼



「! ひっ!!」



「んな情けねぇ声だすぐれーなら、最初から言うなっつーの。それに覚えてて都合が悪りぃのは、そっちじゃねーのか?あー、あと!そこの花魁さんには、もう手ぇ出すんじゃねーぞ!!あいつぁ、俺んだからな!!」



「なっ!!嘘だ!!おまえっ!!嘘をつくなっ!!お前、どう見ても浪人だろう!!」



「浪人だろうとなんだろうと、花魁さんが気に入ってくれたんだから、関係ねーだろよ、なぁ?」



突然こちらを振り返り、ニカッと笑いながら同意を求められる



急にふられ、少し動揺したが、ここは彼の言う通りにした方が良さそうだ



「あ、あい…その殿方はあちきのお相手でおす。あちきが唯一許している方なので、その辺にしてたえだかねえと。この方、何をするかわからねえでおすえ?」



なんとか笑顔をつくろい、そう言うと、彼が私の隣に来て、肩に腕をまわされた。



一瞬、ビクッとしてしまったことに気付いたのか、彼が耳元で



「大丈夫だ、何もしねーから」


と囁いた


そして、男に向かって最後に一言



「つーことで、俺らはこれから部屋で思う存分楽しんでくっから、邪魔すんじゃねーぞ!!つーか、今度コイツに手ぇ出したら…わっかてんよな?」



「…くっ…!」



男の悔しそうなうめき声を聞きながら、彼に肩を抱かれたまま、その場を後にした



そっと彼の横顔を盗み見る



ここにくる男たちのような厭らしさは微塵も感じず、凛々しく、男らしい顔立ち



そして、そのたくましい腕は、見かけによらず、とても優しく私に触れている



そして、どこか少年のような、人懐っこいような雰囲気をまとっていて、こうされていることに、不思議と嫌悪感は感じなかった




そして、私たちは空いている部屋へと入って行った







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