薄桜鬼・妄想小説 long story
□永倉新八【想い人〜すれ違い〜】
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頭が真っ白になる
いままでこんな風に接してきた男なんて、一人もいなかった
こんな優しい顔をされ、頭を撫でられて…
どうしていいのか、わからなくなる
この私が…――――
「んじゃ、ちょろっと酒でも飲んで、時間つぶすかぁ」
その言葉に、ハッと我に帰る
「あっ、で、では、あちきがお酌いたしんす。と、隣に座っても、よろしゅうおすか?」
「おう!!頼むわ。あんたみたいなべっぴんさんについでもらった酒は、最高だろうなぁ」
私はお酒を用意し、彼の隣に座り、おちょこにお酒をそそぐ
「ありがとよ…っと、そういや、名前聞いてなかったな」
…そうだった
私は名乗りもせずにお酌をしてしまっていた…
なんたる失態…
この私が…
「も、申し訳ありんせん。名乗るのが遅れんした。あちきは結花と申しんす。どうぞよろしゅうお頼みしんす」
深々と頭を下げる私にまた、いいから、と少し困った顔をする。
…ほんとうに苦手なんだな…
ということは、ここに来たのって…初めて?
それとも、最初からこういう接客を拒んでいたのか…
「俺は、永倉新八。あぁ、新八でいいからな!!間違っても、永倉様なんて呼ぶんじゃねーぞ。んな呼び方されたら、どうすりゃいいかわからねぇから、な!結花ちゃん!!」
「!!!」
…ちゃん?
今、ちゃんって言った?
ちゃん付けって!!!
自分でも顔が赤くなっていくのがわかり、少しうつむく
そんな呼び方をされるのは、生まれて初めてだった
そして、自分のことは名前でって…
さすがに呼び捨ては無理だから…
新八様…?
いや、絶対嫌がるだろう
ということは、新八さん…
…はぁ、調子が狂いっぱなしだ…
今日はどうしたのだろう
急にあんなことが起こって、やはり動揺しているのだろうか
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