薄桜鬼・妄想小説 long story
□永倉新八 【想い人〜再会〜】
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「…ここか?」
町の少し奥まったところに、その甘味屋らしき建物が佇んでいた
店の中には、客はいないが、ついさっきまで賑わっていたのか、店主が後片付けをしていた
「はぁ〜…いきなり走り出すからビックリしただろ!?」
「で?ここなのか?新八」
「あぁ、たぶん…」
俺たちは店の中へと入って行った
優しそうな店主がこちらに気付くと、にこやかな顔で出迎えてくれる
「いらっしゃい」
「あの・・・さ・・・、聞きてぇことがあるんだけど・・・」
そう言うと、店主の顔が少し曇る
「……なんですか?」
「あ〜・・と…ここに、綺麗な姉ちゃんが働いてるって聞いたんだけど…」
そういうと、さっきのにこやかな顔とは一変して、こちらをギロリと睨む
「「「!!!」」」
「お、おい、新八!お前の聞き方が悪かったんじゃねぇか?」
「そうだよ!もうちょっとなんか、こう、丁寧にいわねぇと…」
「んなこと言ったって…」
店主は睨んでいた顔をそむけ、ふぅ〜っと深いため息をついた
「…お前さんたち、何の用だ?ここは甘味屋だから、甘味しか出してないんだが?」
「あ、いやっ…そのっ…俺達、人を探してて…」
「あっちの店先で遊んでた子供たちが、ここで働いてる姉ちゃんの話をしてくれてな。その姉ちゃんと俺らが探してる女の特徴が似てて、もしかしたら、と思って…な」
「……」
「別に俺ら、怪しいもんじゃないって!!ただ、江戸に居た時に知り合った花魁が…」
「平助!!」
「…っ…あ、悪ぃ…」
「…お前さんたちは江戸から来たのか?」
「…あぁ、そうだ」
「…で?その女を探して、どうするんだ?」
「…俺はあいつに伝えなきゃならねぇことがあるんだ。それを…伝えに来た」
店主は表情を変えずにずっと横を向いたままだったが、こちらに向き直り、俺を見据える
俺も黙ったまま、店主の目を真っ直ぐみつめる
そして、もう一度、店主に尋ねた
「…ここに結花はいるのか?」
こちらを見据えていた店主の目が、ふっと緩み、俺の近くにあったいすに腰をかけた
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