薄桜鬼・妄想小説 long story

□永倉新八 【徒桜】
2ページ/35ページ




――――着いた場所は、京の都で一番の花街、『島原』





普通の人ならば寝静まっているこの時間、この場所だけは明るく賑わっており、そのきらきらと輝く情景だけで圧倒されてしまいそうになる




私は思わず、土方さんの着物の袖の端をギュっと握りしめた




そんな私の様子に、土方さんはさして気を止めるでもなく、そのまま目当ての店へと歩いて行った




店につき、門をくぐると、そこの店主らしき男が軽快に話しかけてきた




店主「これはこれは、お久しぶりですなぁ、土方さん!!いや、今日も上等な酒を用意してますんで、ゆっくりと…」




大声で捲し立てる店主の言葉を片手で遮り、苦笑交じりの表情で店主に問いかけた




土方「すまんが、今日は別件で来た。いつもの三人、今日もここに来てんだろ?」




それを聞いて、店主も理解したようで、お互いに渋い顔で笑いながら、店主が部屋の前まで案内してくれた




土方さんが勢いよく襖を開けると、目を見開いたままびっくりして固まる平助くんと原田さんの姿があった




土方「おい!てめぇら!毎晩毎晩、いつまで呑んでんだ!!いい加減にしねぇと…」




土方さんの怒声が響き渡る中、危機を感じた平助くんが崩していた足を正し、それ以上怒鳴られないようにと必死に言葉を発してきた




藤堂「わ、わ、わかった!!わかったから!!も、もう引きあげるし!!説教なら屯所でたっぷり聞くからさぁ〜!!な、土方さん!!」




平助くんたちの周りにいた芸子さんたちがクスクスと笑みを零しながら、その場で一礼し、部屋を後にしていった




そんな慌てる平助くんの横で、原田さんは困ったような笑みを浮かべていた




土方「ん?新八はどうした?」




その言葉に私もハッとし、部屋を見渡した




確かに永倉さんの姿が何処にも見当たらない…




土方さんの後ろから身を乗り出した私に気付いた原田さんが、さっきよりも更に目を見開き、一瞬声を失ったかのような表情を向けた




原田「結花…!?な、なんでここにっ…!?」




原田さんが言葉を詰まらせる中、平助くんが素直に土方さんの質問に答えた




藤堂「あー、新八っつぁんなら酔い潰れて隣の部屋で寝てるよ」




原田「平助っ!!」




原田さんが平助くんの言葉を止めるかのように言い放った言葉を聞く間もなく、私は隣の部屋の襖へと手をかけた












次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ