ラッキードッグ1・妄想小説
□ルキーノ 【It teaches with the body】
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なんとなく、その庭も居心地が悪くなってしまい、結局私はあの胸やけしそうな会場へと戻って来てしまっていた
「…もう仕事も終わった様なものだし…具合悪くなったとか言って帰っちゃおうかな…」
そこで、キョロキョロしながら上司の姿を探していると
「誰か探してるの?」
不意に後ろから声をかけられたと同時に私の眉間に皺が寄る
まただよ…
もううんざりしながらも、振り向きざまに顔を作り変え、声を掛けてきた人物を見やる
見たことはないけど、もしかしたら仕事でお世話になってる人かもしれない、という思いが、その人物を無下にあしらう事を躊躇わせた
「いえ、大丈夫です。少し、中の様子を見ていただけですので…」
そうにっこり微笑むと、素早く体を翻しその場を後にしようとしたのだけれど
「待ってよ」
そう言って腕を掴まれてしまった
もう勘弁して…
私はもう一度その男を振り返ると、先ほどよりも少しだけひきつっているであろう笑顔を見せながら、丁寧に応対をした
「私そこで人を待たせていて…。申し訳ないのですが、放していただけますか?」
「…本当に?」
男は不敵な笑みを浮かべ、その手に更に力を込めた
「だったら、その人の所まで一緒について行ってあげるよ。途中で変な男に声かけられるのも、大変だろ?」
…こいつ…
この男は私が嘘を言っていると踏んでいるんだろう
確かに…嘘なんだけど…
もうちょっとマシな嘘をつけばよかったと、今更ながらに後悔した
とりあえず、騒ぎをおこすのは絶対に避けたいところだし、こういう男は、どんな状況でも、必ず私に不利な言い訳しかしないだろうし…
少し危ないけれど、人気が少なくここより離れた所で振りきるしかない…か…
私は仕方なしにその男に腕を絡ませられたまま、会場の外へと歩き出した
会場から廊下に出て、喧騒から逃れたと同時に、男は私の腰を抱いてくる
そして、顔を背ける私の耳元で囁かれる、気持ち悪い声…
「さっきの…嘘なんだろ?」
さて…ここからだな…
私の腰をがっちりと掴む手にそっと自分の手を回し、男の足にヒールを突き刺してやろうとゆっくり足を上げようとした時
前から、カツ、カツ、と音を鳴らしながら歩いてくる人物が目に飛び込んできた
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