薄桜鬼・妄想小説 short story

□土方歳三【恋慕】
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いつもは何かと騒がしい屯所内だが、今夜は水を打ったように静まり返っている


今日は、くりすます≠ニかいうやつらしく、島原で宴会だっつって、みんな出払っちまっていた



俺も誘われはしたが、仕事も残ってるし、屯所をものけの殻にするわけにもいかねぇからな


ま、あいつらにはいろいろと不憫な思いをさせちまってるところもあるし、たまにはいいだろう



…あいつも連れてかれたんだろうな



ここに残る理由もねぇしな…



俺が引き止める理由も…



そんなことを考えていた時、襖の向こうから俺の名を呼ぶ声が…




「土方さん、お茶を淹れてきました」



結花か?



…なんで居るんだ?



あいつらと一緒に行かなかったのか?



筆を置き、襖をあけると、両手で盆をもった結花が少し驚いた顔で俺の顔を見上げていた




土方「なにびっくりしてやがる」


「あ、いえ…その…襖があいたので…」


土方「…ちょうど休憩しようと思ってたんだよ。…入れ」


「し、失礼します」




ったく、自分から来たくせに、なに怯えてやがるんだか…




「あ、の…お茶、机に置いときますね」


土方「…ああ」


「…あ、の…」


土方「なんだ」


「…少しだけ、ここにいても…いいですか?」




俺の目を真っ直ぐ見ながらそう告げる結花



…なんだって俺なんかのところにくるんだ、こいつは……



俺といる時は、こわばった顔しかしねぇくせに…



あいつらといる時の方が、よっぽど楽しそうじゃねぇか




土方「…なんであいつらと一緒に行かなかったんだ?」


「……土方さんは、どうして行かなかったんですか?」


土方「あ?…俺は仕事がたくさん残ってんだよ。
つか、今はお前に質問…」


「私も仕事があったので残りました」


土方「仕事だぁ?お前がなんの仕事を…」


「土方さんがお仕事をするなら、私がお茶を用意します。
それが…私の仕事です」


土方「…そんなの頼んだ覚えはねぇ」


「…私が決めました」


土方「勝手に決めてんじゃねぇよ!おら、さっさとあいつらんとこ行って来い」


「…邪魔…ですか?」


土方「あ?」


「…私がここにいたら…邪魔・・ですか?」




なにを考えてやがるんだ、こいつは…



そんな泣きそうな顔してこっち見てんじゃねぇよ




…抑えがきかなくなんだろーが…





土方「…俺といたって、つまんねぇだろ。せっかくのくりすます≠チてやつなのに、あいつらと一緒のほうが…」


「だから…!…くりすます≠セから…土方さんと…一緒に…」



消え入りそうな声で、でも目だけは真っ直ぐ、訴えかけるような眼差しを向けてくる




こいつ…俺のことを…?




でも、いつも怯えた表情をしてんじゃねぇか…




土方「…俺のことが、怖いんじゃねぇのか?」


「え?」



土方「俺といると、いっつもこわばった顔してんだろ」



「…土方さんがそういう顔、してるからですよ」



土方「は?」



「だって…いつも何かを抱え込んで、難しい顔をしてるのは、土方さんじゃないですか。
だから…少しでも…何か出来ないかと、考えてて…
今日だって、自分だけ一人で残って…」



土方「だから、仕事が…」



「無理ばっかりしないでください!出来ることは少ないかもしれないけど…
少しは私やみんなに頼ってください…仲間、なんですから…」


土方「……」




思いもよらぬ言葉に、一瞬目を見開き結花の顔を見る




…そうか…そんなことを、考えてたのか…



別に俺は、自分の出来ることをただただしていたつもりだったんだが…そんな風に思わせちまうなんて…俺もまだまだだな…




土方「…仲間…か…」



フッと顔に笑みがこぼれる



そんな俺の表情にキョトンとしてる結花に近づき、少し紅潮した頬をそっと撫であげる




土方「…お前のことは…仲間とは思ってねぇけどな…」



その言葉に顔がこわばり、今にも泣きそうな表情を見せる



…またなんか勘違いしてんな



…いい加減気付けよ…俺は…お前が…






頬を撫でてた手を結花の頭の後ろにまわし、そのままグイっと引き寄せ唇を重ねる



結花の手が俺の着物をギュっと掴んだが、その手がだんだんと緩み、そっと背中へとまわされた



そのまま、結花を抱えあげ、畳みに横たえる




唇をそっと離すと、少しとまどっているような結花の表情が目に入る





土方「…なんて顔してんだよ」


「…だっ…て…」


土方「まだわかんねぇのかよ。…俺はお前を仲間としてじゃなく…
女として見てんだよ」



「!」



土方「ったく、今更赤くなってんじゃねぇよ」



「…土・・方…さ、ん…」



土方「…結花…好きだ…」



「…っん!」





何か言いかけた結花の唇をむりやり塞ぎ、着物を乱していく…




お前が言いたいことはわかってるんだよ




だから…言葉じゃなく…その体に聞いてやるよ…




俺の想いも、全部お前に…そそいでやるから……
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