ラッキードッグ1・妄想小説
□ルキーノ 【It teaches with the body】
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優雅な音楽…
テーブルに敷き詰められたたくさんのご馳走…
社交辞令染みた挨拶ばかりが飛び交い、偽りの笑顔を振りまく人々…
綺麗なドレスを身に纏い、すまし顔の仮面を被った女たち…
そんな女たちに取り入ろうと、思っても無い事を口にする男たち…
「…マジで吐き気がしてくる…」
私はこういう場がとことん苦手だ
苦手…というより、大嫌いだった
それでも仕事上、こういうパーティーに出席しなければならないことがままにあり、その度に、なんとかここを抜けだす方法ばかりを模索しているのだった
「○○、こっちだ」
この場では、上司に呼ばれるたびに、取引先の人たちに笑顔を振りまくのが私の仕事、みたいなものだった
そう、私は上司のお飾り的な存在…
そんな私を好奇な目で見てくる男たちに、嫌でもむりくり微笑みながら、握手を交わしていく
そして、上司の目を盗み、声をかけてくる輩共を、極上の笑顔を浮かべながら、ことごとく丁重に断っていくのだった
…本当に、反吐が出るほど煌びやかなこの世界…
それでも、これも私の仕事なのだから、と、何回出席しても慣れないこの場に、倒れそうになりながらもなんとか身を置いているのだった
挨拶も一通り落ち着いた所で、息を吸い込むたびに、むせかえる様な香水のにおいに犯される鼻孔や肺や口腔を浄化しようと、いち早くフロアから抜けだし、ライトで照らされた庭園へと向かった
広い庭園は、優しい光でライトアップされていて、噴水の流れる音がBGMとなり、中よりは全然安らげるような場所だった
私は、体の中の空気を入れ替える様に、数度大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと庭園内を歩き始めた
確かに、落ち着ける場所には違いないけれど…
この雰囲気は…
「…逢い引きするのにはもってこいよね」
今はまだ時間も早いからそうでもないだろうけど、きっとそのうちこの庭園は、抱き合う男女の陰で埋め尽くされる事だろう…
「それにしても、広い庭園…」
ライトアップされてるとはいえ、薄暗い庭を手探り状態で足を進めていくと…
「たく…だから俺はこういう場が大嫌いなんだよっ!人をガキ扱いしやがって!」
「落ち着けよ、ジャン。仕方ないだろう?まだお前はそれほど知られてるわけじゃないし、なりもなりだしな」
「なりはどうしよーもねぇだろっ!?あーもー、イライラするし一気に疲れたぁ〜!!」
すぐそばから、男二人の話し声が聞こえ、フっとその場で足を止めた
「何回かこういう場に顔を出せば、そのうち慣れるし、顔も覚えられてそこそこ楽しめる様にもなるさ。まずは、経験を重ねていくことだな」
「経験で楽しくなる、か…。セックスみたいなもんだと思えばいいのかぁ?」
「ハハッ、おいおい。それはちょっと飛躍しすぎだろう。ま、でも、ここでは女は選び放題だ。ストレス解消に、一発でも二発でも、抜いてきたらいいんじゃないか?」
…全く男って生き物は…そういうことしか考えられないのだろうか…
こういう男は大嫌い…
女を道具としてしか思ってないような男共…
自分を何様だと思っているのか…
いっそのこと、あんたたちだって同じような目に合えばいいのに…
「…こんな男たちと関わるとロクなことにならないんだから」
さわらぬ神に祟りなし、といった感じで、私は足早にその場から去っていった
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