長編
□笑ってたいんだ 4
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「参ったな。お前にそんな風に叱られるとは思わなかった」
本当は怖かったのだ。
バーナビーの答えを聞くことが。
例えば引き留められるとしても、あっさりと手放されるとしても、彼に決断を委ねるようで嫌だったのだ。
こうして突き放されてみて、初めて虎徹は自分こそがバーナビーに依存していたのだと気づかされた。
「お前、成長したな」
「はあ?こんな時に何言ってるんです?」
「ありがとな、バーナビー」
何かを決意したような虎徹の様子にバーナビーはぐっと言葉に詰まった。
「あなたの、あなたのドリームはまだ叶ってないんでしょう?」
「…そうだな」
「僕があなたの分もカバーする。だから!」
不意に虎徹の右手が伸びてきて、ポンポンと優しくバーナビーの頭を叩いた。
「お前の気持ちはうれしいけど、そいつはダメだ。そんな足手まといな自分、俺が許せねぇよ」
柔らかい笑みはいつも見慣れたものだ。
(ああ、なんて残酷なんだろう)
バーナビーは俯いたまま、唇を噛む。
(誰よりもヒーローを愛した彼からヒーローを奪い去るなんて)
ひどく胸が苦しくて、顔を上げることができずにバーナビーはただ、黙って虎徹の手の温もりを感じていた。
突然、静寂を打ち破って二人のPDAから緊急コールが鳴り響いた。
「ボンジュール、ヒーロー!」
それは事件発生を知らせるアニエスからの出動要請だった。
続く