短編2

□壁に耳あり障子に目あり
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「おはよう!」

ヒーロー達の集まるトレーニングルームに明るい声が響き渡る。

「おはよう、パオリン。今日も元気だね」
「元気がボクの取り柄だからね」

明るく笑いかけられたイワンが思わず苦笑した。
一見、対照的に見えるこの二人が実は仲がいいことを知っている仲間達はその様子を微笑ましく見守っている。

「そう言えば、今朝は大変だったわね。市長の赤ちゃんは無事に帰ったの?」
「うん、いろいろあったけどちゃんとパパとママのとこへ帰ったよ」
「そう…。よかったわね」

パオリンとカリーナとの会話で何か思いついたのか、不意にネイサンが二人の間に割り込んできた。

「ねえねえ!ハンサムの家ってどんなだった?」
「え?どんなって…うーん、そうだなあ」

あのクールなバーナビーの自宅がどんななのか、恐らく皆興味があったのだろう。
いつの間にかトレーニングルーム内にいる仲間達の視線がパオリンに注がれていた。

「あんまり物が無くってつまんなかったかな。でも、部屋ん中はとってもキレイだったよ」
「ふーん…」

予想通りの答えに、室内が一様にがっかりした空気に包まれる。

「でも、よくあの仲の悪い二人が一晩一緒に過ごせたわねぇ」
「仲悪くなんかないよ」

ネイサンの呟きに対するパオリンの答えに、あちこちから「えっ!?」と驚きの声が上がった。

「だって、夜中に二人でプロレスごっことかしてふざけあってたから」

途端にどよめきや、スポーツ飲料を吹き出すブーッと言う音があちらこちらで響き渡った。

「…アンタ、何を見たの?」
「ああ、えっと…夜中に目が覚めてトイレに行こうと思ったんだけど、寝ぼけて部屋を間違えちゃったんだ」
「それで?」
「なんか変な声がするからのぞいてみたら」
「のぞいてみたら?」

爛々と目を輝かせて先を促すネイサンの声は好奇心丸出しだ。
その横ではアントニオが頭を抱え、空気の読めないキースはニコニコと続きを待っている。
そして、ヒクヒクと口元を震わせるカリーナとイワンは今にも卒倒しそうだ。

「バーナビーがタイガーを押し倒して乗っかってたんだ」

パオリンが無邪気にそう言った途端、声無き悲鳴が部屋中を包み込んだ。


「おはようございます」
「おはようさん!って、え?…なんだよ」
「……」

タイミングよく姿を現した二人のコンビに冷たい視線が集まる。

「…なに?なんだよ?俺達、なんかしたか?」

訳が分からずキョロキョロと周囲を見回す虎徹の肩を叩いて、ネイサンは一言こう言った。

「アタシはアンタ達の理解者よ」

その日から、二人はヒーロー仲間公認のカップルとなったのだった。



本日の教訓
「気をつけよう、壁に耳あり障子に目あり(笑)」







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