短編2

□シークレット・ラブ(R)【後編】
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部屋に入るなりバスルームへと向かった虎徹の後ろ姿を見送り、バーナビーは重いため息をついた。
VIP御用達が売りの上質な毛並みの絨毯も、無駄に広い空間も贅沢な調度品も、部屋から見える美しい夜景もすべてどうでもいい。
それほどに、虎徹の告白は衝撃的だった。

(くそっ、だから何だって言うんだ)

胸に沸き起こるモヤモヤとした感情は軽蔑とはまた違う気がする。
どちらかというと、それは怒りに近い。
そして、その対象が虎徹と言うよりも相手であるスポンサーに向けられている事実がバーナビーを苛立たせた。

(…少し、悪酔いしたかな…)

接待の席での酔いと混乱した頭を冷やすべく、彼は静かに窓から見える街の夜景を見下ろした。




「‥くそ‥ッ」

同じ頃、バスルームのシャワーを頭から浴びながら虎徹は後悔していた。
弁解の余地が無かったとは言え、スポンサーとの関係はバーナビーには知られたくなかった事実だ。
なぜ、ぶちまけてしまったのだろう。

(‥バカなこと、しちまったな…)

彼は自分をもう二度と、相棒とは認めてくれないかもしれない。
半ば、朦朧とした意識の中で後悔の念が虎徹の心を責め苛む。

「ん…うっ…」

不意に、思考を遮るように下半身からジクジクとした熱が沸き起こってきた。

「ち…くしょ‥」

震える手を股間に伸ばすと、すっかり形を変えた己の性器を握りしめる。
くっ、と微かな喘ぎを漏らした虎徹は更に指先に力を込めた。

「‥うっ…く…はぁっ!」

先端のくびれから根元まで一気に擦りあげると、痺れるような快感が背筋を走り抜けた。

「あ、あぁッ…!」

何度か扱いただけで絶頂を迎えた虎徹のペニスが白濁を撒き散らす。

ザーッ、ザーッ…。

シャワーの激しい水しぶきに消えてゆく液体を眺めながら、虎徹は唇を噛んだ。

「…んでだよ‥」

イったはずの体の熱は一向に治まらず、下肢を貫く疼きは強くなるばかりだ。
そう言えば、スポンサーの男がこの薬を使えば射精するだけでは物足りなくなると言っていたのを思い出しチッと舌打ちする。

「んんッ!…ん…くッ」

再び自慰を繰り返すも激しくなる劣情に、虎徹はバスタブの縁に手を突き足を開いた。
右手にボディソープを塗りつけると、尻の窄まりに指を這わす。

「あ、あぁッ…」

盛られた媚薬のせいか、柔らかく解れた蕾は虎徹の指を難なく受け入れた。

クチュリ、ヌプ、ヌプ…。

ゆっくりと出し入れを繰り返しながら前を扱くと、たまらない愉悦に虎徹の背が仰け反る。

「あっ…あっ、くぅ‥」

だが、何度達しても快感の波は消えない。
終わりのない快楽地獄に、いつしか虎徹は泣きながらズルズルと床に崩れ落ちていた。

(‥だれか、たすけて…)

きつく閉じた目から涙が溢れる。

(バニー…)

ハアハアと荒い息を吐きながら、虎徹はうつろな表情のまま身を横たえシャワーを浴び続けた。





「遅いな…」

備え付けの時計を見てバーナビーはポツリと呟いた。
虎徹がバスルームに消えてから、かれこれ小一時間は経過している。

(何かあったんだろうか?)

事情が事情だけに、さすがに心配になったバーナビーは座っていたソファーから立ち上がった。
途中、虎徹が何も持たずに行ってしまったことを思い出し、バスローブを手に取る。

(なんで僕がこんなことをしなきゃならないんだ)

釈然としない思いに気は進まなかったが、それでもバーナビーはバスルームへと向かった。

「いつまで入ってるんですか?おじさん!」

扉の外から声をかけるが返答はない。
シャワーの音だけが響くバスルームの中からは物音一つ聞こえてこなかった。

「おじさん…?」

しばらく待つがやはり返事がないことに焦りを感じて力任せに扉を開ける。
そしてシャワーを浴びたまま倒れている虎徹の姿を見たバーナビーは、思わずその場に立ち竦んだ。

「おじさん!」

慌ててシャワーを止め、濡れた体をバスローブで覆う。
どうやら意識はあるらしく、バーナビーが覗き込むと虎徹は苦しそうに呻き声を上げた。

「大丈夫ですか?」
「さ…わん‥な…」
「こんな時に何言ってるんです!」

軽く水分をふき取るとそのまま体を抱き上げ、ベッドへと運ぶ。
静かに横たえると虎徹は荒い息のまま、体を抱き抱えるように横を向いてしまった。

「あっち、行け‥よ」
「はぁ?こんな状態で何を」
「こんな状態だから!…お前には…見られたくねーんだよ…くっ‥」
「‥おじさん、あなた」

小刻みに震える背中はバーナビーを拒絶している。
それが虎徹のなけなしのプライドなのだと気づいた時、バーナビーの中にある感情が芽生えた。
同情でも哀れみでもない、それは…。

「バニー…?」

そっと触れられた感触に虎徹が小さく彼の名を呼ぶ。

「今から僕はあなたを抱きます」
「なっ!?」

振り返った瞳が驚きに見開かれる。
絶望と期待と、二つの相反する感情を映し出す琥珀色を見つめながら、バーナビーはゆっくりと虎徹の体にのし掛かった。

「…好きに、しろ」

一瞬、躊躇するかのように表情を歪ませた虎徹だったが、やがて静かにその背中に両手を回した。



「ん、んんッ‥」

恋人同士のような手順を踏む必要はないと、せかすように虎徹はバーナビーの性器を握り締め刺激を与える。

「お‥じさん‥」

慣れた手つきで扱いてやると、若いバーナビーのペニスはすぐに固くなった。

「‥はやく、入れてくれ‥」
「でも‥」
「いいから…もう」

俺が限界なんだ、と囁いて虎徹はバーナビーのモノに手を添えた。

「…入れますよ」
「ん、…ッ‥」

大きく開かれた足の間に体を割り込ませ、バーナビーがゆっくりと先端を秘所へと押し当てる。
ぐっと中へ突き入れると、閉ざされた入り口は待ち望んだかのように彼のモノを受け止めた。

「あっ、あぁッ…」
「ハッハッ、くっ…」

激しく突き上げられる度に虎徹の体が喘ぎ、仰け反る。

「バニー…もぅ…イかせ…」
「おじさん、僕もイキそう‥なんですけど、外に」
「こ、このまま‥なかに‥んんッ!」
「でも‥」
「いいから‥!たのむ、バニー…あぁッ」

切羽詰まった声で強請られると同時にギュッと中で締めつけられ、たまらずバーナビーは虎徹の中に精を吐き出していた。


どうやら粘膜から精液を吸収することで緩和されるタイプの薬だったのか。
ようやく得られた絶頂に虎徹はそのまま気を失った。




「…らしくないな」

穏やかな表情で眠る男の顔を複雑な思いでバーナビーは見つめる。

「もしかしたら、順番を間違えたのかもしれない。僕は、あなたを…」

そう呟いた彼は、意識のない虎徹の唇にそっと己のそれを重ねる。
その口づけはほんのり甘くて、そして苦くて、秘密の恋の味がした。







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