短編2

□The Beginning
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『本当は、あなたとコンビなんて組みたくなかった…でも会社命令なので』
『…ああ、そうかよ』



やってしまった、と思ったが後の祭り。
あそこまで本音をさらけ出すつもりなどなかったのに。
あのお節介焼きのオジサンといると、どうにも自分が抑えられない。

(ペースが狂いっぱなしだ)

僕は眉間を押さえると、その日何度目かのため息を吐いた。




「おぉっと!期待のスーパールーキー、バーナビーが犯人確保だ!」

巨大遊園地に逃げ込んだ犯人を捕まえ警察に引き渡すと、オジサンが近づいてきた。
そう言えばあの人、任せろと言った僕の後を追いかけては来なかったな。

「おい!」

掛けられた声につい、身構えてしまう。

「何です?またスタンドプレーはダメだとか、古臭いお説教ですか?」

牽制の意味を込めてそう言うと、違う違う、と彼は苦笑した。

「よくやったな、ってそう言おうとしてたんだよ」
「…それはどうも」

肩に手を置かれ、労うようにポンポンと叩いて彼は言葉を続けた。

「ただな、これだけは忘れんな。お前は一人じゃない」
「え?」
「だからヤバいと思ったら俺を呼べ。そのために俺はいるんだからな」

一人じゃない、この言葉に僕は衝撃を受けた。
今まで何度も他人に言われ続けてきたけれど…なぜ、今になってこんなにも心を揺らすのだろう。

動揺を隠すように僕は肩に置かれた手を振り払う。

「…あなたの助けなんて必要ありませんから」

感情を抑えた声でそう告げた僕に肩を竦め、オジサンはニヤリと笑った。

「コンビ組めってのは会社命令なんだろ?だったら、お仕事はちゃーんと仲良くやろうぜ」
「なっ…」
「バニーちゃん」

…ああ、やっぱり僕はこの男が大ッ嫌いだ!

「僕はバニーじゃない!バーナビーです!」

叫んだ僕に向かって、オジサンは一言こう言った。

「可愛くないねぇ。バニーちゃんは」



本当に、出会いは最悪。
けれども、ここから僕とオジサンの物語は始まったのだ。







※ツンバニ可愛いな。で、器の大きなオジサンが好きだ‥と思ってる自分が虎兎でなく兎虎にハマったのは今でも不思議。


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