お仕置きシリーズ
□お仕置きタイム6(R)
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※いつにもましてバニーちゃんがひどいです。それでもよければどうぞ…。
コンビヒーローの二人が同時に揃って休日など、滅多にあるものではない。
なので、そんな時は決まってバーナビーの部屋で、自堕落なセックスに耽ることが多い。
だがその日はいつもと違って、虎徹は珍しく彼の部屋で彼と共に、穏やかな時間を過ごしていた。
「どこか行きたい所とか、ありますか?」
ふと思いついたようにバーナビーに尋ねられ、虎徹は床に座り込んだままうーんと考え込むように腕を組んだ。
「そうだなあ…」
特にこれと言った希望はなかったが、せっかくのバーナビーの好意を無駄にはしたくないと虎徹は思った。
何より、セックス抜きで過ごす二人っきりの時間は甘く心地よい。
「なら、観たい映画があるんだけど」
「映画‥ですか?」
「うん…」
虎徹が観たいと言った映画は過去にヒットした恋愛映画をリメイクした作品だった。
ごくありふれた内容ではあるものの、恋愛ものの王道を描いたこの作品はキャストも新たに撮り直され、現在公開の真っ最中である。
「あなたがこういう映画を観たいなんて意外だな」
「‥うるせー。お前が行きたいとこを聞いてきたから答えたんだろうが」
本当のところ、どうせ『このまま二人っきりで過ごしましょう』と却下されるとばかり思っていたのだ。
それなのに…。
「じゃ、今から僕の車で出掛けましょうか」
と告げられ、虎徹は驚いたようにバーナビーを見つめ返した。
バーナビーの愛車で連れてこられた場所は、最近出来たばかりのドライブインシアターだった。
だだっ広い巨大な駐車場に整然と車の列が並んでいる。
その前方にはこれまた巨大なスクリーンがそびえ立ち、ある種の異様な光景を作り出していた。
夜の闇の中、静かに息を潜めるようにして皆、映画の上映を待っている。
「えっと、確かラジオのチャンネルを合わせると音が聞こえるはずなんですけど…」
「へえー、すげーな」
「あ、これでいいみたいですね」
チューナーを合わせると、何やら案内の放送が流れてきてバーナビーはフッと息を吐いた。
「俺はてっきり映画館で観るとばっかり思ってたぞ」
「まさか。あなたと違って、僕は顔出しヒーローですからね。そんな目立つことするわけないでしょ」
「…ま、確かにな」
「あなたが映画の話をしたんで、このドライブインシアターを思い出したんです」
なるほどな、と助手席に深くもたれた虎徹はスモークガラス越しに外を見た。
暗闇の中、これなら中に今人気絶頂のヒーローがいるとは誰も気づかないだろう。
「始まりましたよ」
バーナビーに促され、正面スクリーンに顔を向けた虎徹は、やがて映画の世界へと引き込まれていった。
映画の内容は本当に至極ありふれたものだった。
(つまらないな…)
退屈になったバーナビーが隣の虎徹を伺うと、彼はひどく熱心な表情で映画を観ている。
(何がそんなにいいんだか‥)
そう思った時、不意に虎徹の目が優しく細められた。
視線の先を追ったバーナビーの瞳が一人の女優に引き寄せられる。
長い黒髪に線の細いその女性には、何となく彼にも見覚えがあった。
(確か彼女に似た人に、どこかで会った気がする。けど、いったいどこで‥?)
考えかけて、バーナビーはあっ、と小さく声を上げた。
その女性を見たのは虎徹の自宅で、ベッド横の写真立ての中で。
それはつまり…。
「…そういうことだったんですか‥」
今日は彼に優しくしたいと思った。
だから、彼の望みを聞いて二人で楽しく一日を過ごそうと、そう思っていた。
(虎徹さんは、今は僕のものなのに…)
愛しげに見つめる虎徹の脳内を占めている人物は今もきっと、彼の思い出の中で生きている。
どうしようもない現実を突きつけられたバーナビーの心を暗い嫉妬心が覆い尽くしていった。
「虎徹さん」
「ん?」
呼びかけに振り向いた虎徹の顔を無理やり押さえつけ唇を重ねると、くぐもった声を上げ虎徹は身を捩らせた。
「バニー、んなとこで‥」
どうやら、虎徹はいきなりのバーナビーの豹変ぶりに戸惑っているようだ。
「お仕置きですよ」
「な…んで」
「あなたが僕以外の人間を思うなんて許さない」
この言葉で彼が言わんとしていることを理解したのだろう。
虎徹は後ずさりながら、バーナビーを睨みつける。
「お前に俺の思い出まで奪う権利はない」
毅然とした虎徹からの拒絶と鈍く光る左手薬指の銀色がバーナビーの最後の理性を奪い取った。
「ん、あっ、…あぁ!」
目の前では映画がクライマックスを迎えようとしている。
「ほら、虎徹さん、ちゃんと前を見て」
「‥う、う゛‥く」
「見られながら後ろを弄くられてあなた、感じてるんでしょう?」
バーナビーの膝の上に座らされた虎徹は後ろ手に縛られた不自由な体勢で彼の愛撫から逃れようともがく。
「また、締まった」
ぐちゃぐちゃと音を立てて出入りを繰り返す指は虎徹の弱いところを的確に攻め立て、その度に虎徹はビクリと体を震わせた。
ズボンと下着を膝まで下ろしただけの格好で、下手をすれば誰かに見つかるかもしれない。
それなのに快楽を教え込まれた体は正直に快感を拾い上げた。
「見られるかもしれないのに、なにおっ勃ててるんですか?」
「ち、ちが‥」
「ああ、そうか。虎徹さんは見られて興奮する変態なんだ」
「‥やっ…ち‥が‥」
唇を噛み締め、首を振る虎徹から涙の雫が飛び散りバーナビーの頬を濡らす。
「淫乱」
耳元で囁くと、バーナビーは虎徹のそそり立ったペニスに手を掛けた。
「あの人の前で、好きなだけイって下さい」
言葉と共に指が引き抜かれ、同時に押し当てられたバーナビーの熱を感じて虎徹は声にならない叫びを上げた。
「…ん、ん゛ッ‥」
ひたすら突き上げるだけの愛情の欠片もない行為はひどく虚しかった。
熱くなる体と裏腹に冷めてゆく心に、バーナビーは早々に絶頂を迎える。
「くぅっ…」
溜まったものを吐き出し、ズルリと己を引き抜くと力を失った虎徹の体が倒れ込んできた。
「…ん、はぁ‥はぁ‥」
荒い息を吐く彼を抱き締めながら、バーナビーはただひたすらに「愛しています」と繰り返すことしかできなかった。
※すいません。ドライブインシアターが書きたかっただけなんです…
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