お仕置きシリーズ

□お仕置きタイム8(R)
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※モブ虎注意




雑誌「MONTHLY HERO」のインタビューと写真撮影を終え、アポロンメディア社に戻った二人を待ちかねたようにロイズが出迎える。

「二人ともご苦労様。あ、虎徹くん」
「なんスか?」

ちょっと、と小声で呼ばれてロイズの元へゆく虎徹をバーナビーはさり気なく視線で追った。

「キミ、今日の夜空いてる?」
「今夜、ですか?特に用事はないッスけど」
「ならよかった。ちょっとばかり訳ありの接待をお願いしたいんだよ」
「…あー、接待‥ね」
「相手はこないだキミが壊したビルのオーナーさんだ」

苛立たしげに告げられたロイズの言葉に虎徹はぐ、と黙り込んだ。

「彼はどうやらキミのファンらしくてね。一緒に食事をしてサインでもくれれば賠償金請求はしないと、こうおっしゃってるんだ」
「はあ…」

暗に断ることは許さないぞ、という脅しを込めた上司の笑顔に虎徹もまた引きつった笑みを返す。
そして、チラリと背後のバーナビーを伺った。

「ロイズさん、その接待に僕も同席したいのですが‥」
「バーナビーくんが?」
「ええ、もともと僕らはコンビですし、半分は僕のせいでもあるわけですから」
「何も、キミがそこまで責任を感じる必要はないと思うがね」

ロイズが困惑するように首を傾げ、新人ルーキーを見た。
まさかバーナビーがそんなことを言い出すとは思ってもみなかったのだろう。

「それに、先方はワイルドタイガーをと言ってきてる‥」
「でも、もしも虎徹さんが何か失礼をしでかして先方の機嫌を損ねでもしたら、それこそ取り返しがつきませんよ」
「‥それもそうだが、しかしねぇ」

目の前で展開される上司と相棒のやり取りに、そこは否定しろよ!と内心ツッコミを入れる虎徹をよそに。

「行きますよ、虎徹さん」

結局、バーナビーはその夜の接待に同席するという条件を相手方に取り付けたのだった。





マイルズと名乗る接待相手が指定したのは一流シェフが揃っていることで有名な高級フランス料理店だった。
普段着慣れない、堅苦しいスーツに身を包んだ虎徹はうんざりといった表情でアイパッチを装着する。

「だから物を壊すなって、いつも僕が言ってるのに‥」
「や、俺だってわざと壊してるわけじゃねーよ!」
「…帰ったらお仕置きですね」
「……」

優雅に前を歩くバーナビーの後に続きながら、この後の長い夜を思い気が滅入る虎徹だった。



「よく来てくれたね」

二人を待っていたのはビルのオーナーと言う割にはまだ若い壮年の男で、いかにも上から目線の物言いが彼の生き様を表している。
いわゆる、いけ好かない自信家というやつだ。

「‥どうも、ワイルドタイガーです」
「相棒のバーナビー・ブルックス Jr.です」
「君がバーナビーか‥いや、テレビで見るより若くてハンサムだ。世の女性達が夢中になるのも無理はないな」
「‥どうも」

会えてうれしいよ、と男が差し出した右手をバーナビーはニコリともせずに握り返した。

「さあ、挨拶はこれくらいにしてさっそく食事を始めようか」

男の言葉と共に白ワインが各自のグラスに注がれる。
やがて貸し切り状態の店内に、乾杯の声とグラスの重なる音が静かに響き渡った。

「‥いただきまーす!」
「‥タイガーさん、そのナイフとフォークは違います」

小声で指摘され、虎徹が慌ててバーナビーを見る。

「え?これ使ったらダメなのか?」
「こういう場合、基本的にナイフとフォークは外側から使っていくんですよ」
「そうなのか?お前よく知ってんなあ」
「知ってて当然のテーブルマナーです」

呆れたような口調でバーナビーが言うと、虎徹はムッと口を尖らせた。
そんな二人の様子を見て笑う男と当たり障りのない話題で盛り上がり、瞬く間に時間が過ぎていった。


「さて、食事も済んだことだしそろそろ‥」

思わせぶりにそう言って、男は虎徹に目配せする。

「行こうか、ワイルドタイガー」
「……」

無意識に虎徹は体を強ばらせ、膝の上に乗せた手を強く握り締めた。

「バーナビー、君は帰っていいよ。後は二人でゆっくり過ごしたい」

バーナビーが何も知らないと思い込んでいる男は席を立つと虎徹の側に回り込み、その肩に触れた。
瞬間、バーナビーが冷めた目で男を見つめる。

「隠す必要はありませんよ。あなたがこの後、ワイルドタイガーと何をするのか‥」
「……」
「僕は知っています」

終始にこやかだった男が目を細める。
その口調がガラリと変わった。

「…君は何を言ってるのかな?いや、何が言いたい?」

警戒も露わな男にバーナビーは口元を歪めて今度は虎徹を見た。

「別に止める気も、咎めるつもりもありません。ただ、こういうことはこれきりにしてもらえませんか?」
「ほう…君はすべて知った上で今夜一回限りにしてほしいと、そう言うんだね」
「はい」
「それは脅しかな?」
「…どう取って頂いてもかまいません。それはあなたの自由ですから」
「なるほど…」

二人のやり取りを不安げに見守っていた虎徹の顔色が変わる。
悔しそうに唇を噛み締めた彼は視線を床へと落とした。

「それとマイルズさん、もう一つ‥」
「まだ何か条件があるのかい?」
「その場に僕も同席させて欲しいんです」

バーナビーの言葉に男は驚いた様子で目を見開いた。
そして、それ以上にショックだったのか、隣に立つ虎徹の顔は完全に色を無くしていた。







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