長編3
□帰ってきた王子様(R)
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「これはいったいどういうことなんですか!」
ロイズの執務室にバーナビーの怒鳴り声が響き渡る。
「ちょっと落ち着けよ、バニー」
「これが落ち着いていられますか!せっかくあなたと1部でコンビ復活だと思っていたのに…」
いつもなら吠える虎徹をなだめる側のバーナビーが逆に虎徹になだめられている。
普段とは真逆の光景に、この若者も隣の熱血中年男にすっかり感化されてしまったな…とロイズは頭を抱えた。
「そりゃあ、俺だって驚いてるぜ。けど、1部復帰は叶ったわけだし」
「…条件付きじゃないですか。虎徹さんはそれでいいんですか?」
「いや、俺は別に…」
「こんなの、僕は納得できません!」
バン!と契約書を机に叩きつけたバーナビーは、腕組みしたままイスから立ち上がろうともしないロイズを冷たく見下ろした。
「あのね、バーナビーくん。君も知っての通り我が社は今、オーナー不在なんだよ」
「知ってます」
「で、次の新しいオーナーが決まるまでの間、うちのヒーロー事業部に関する全ての決定権がアニエスさんに委ねられたことももちろん…」
「それも知ってます」
「だったら、君たちの置かれてる立場、十分わかってるよね?」
組んだ両手の上に顎を乗せ、ロイズはため息をついた。
上目遣いにバーナビーを見上げたその顔はすっかりやつれ切っている。
それもそのはず、やり手の新オーナーが就任したと思ったらまたもその人物は犯罪者で目下のところ裁判中。
巻き添えを食らったアポロンメディア社はめちゃくちゃに破壊され、その上軽傷とはいえケガまで負わされた。
一歩間違えれば命の危険だってあったのだ。
嫌みや愚痴の一つや二つ、こぼしたくもなるだろう。
「これはそのアニエスさんの命令なんだよ」
「しかし…」
バーナビーの視線の先には『タイガー&バーナビーwithゴールデンライアンに関する契約書』という文字が見える。
ロイズは机の上のその白い紙を指先で軽く叩きながら、子供に言い聞かせるようにゆっくりと話し始めた。
「いいかい?君たちが1部に復帰する条件はライアンと三人、トリオで活動すること」
「……」
「この条件が飲めないなら復帰はなかったことにするって彼女に言われてるんだよ」
反論しようにもできずにバーナビーは黙り込んだ。
これは相談ではない。
会社命令であり、すでに決定事項なのだ。
もはや虎徹はこういう状況に慣れっこになってしまっていたが、バーナビーはそうじゃない。
ましてや、あのライアンと三人で活動するなど…。
「それにしても、ロイズさん。ライアンはよそに引き抜かれてうちを辞めたんじゃ?」
「そうですよ!この間、僕も別れの挨拶をして…」
「なんだなんだ。まーた駄々こねてんのか?ジュニアくんは」
聞き慣れた俺様口調に振り返れば
「ライアン!?」
「よぉっ!お二人さん、この俺ゴールデンライアンが帰ってきてやったぜ」
部屋の入り口のドアにもたれて、ライアンが虎徹とバーナビーの二人をじっと見つめていた。
つづく
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