短編3

□君に捧げるアイラブユー(R)
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ハッ、ハッと吐く荒い息と共に額を滴り落ちた汗が組み敷いた虎徹の頬に落ちて流れる。
薄暗闇の中、まっすぐに注がれる彼の瞳が自分だけを映していることに安堵して、バーナビーは口角を緩めた。

「気持ちいいですか?」

打ちつける腰の動きとは裏腹に穏やかにバーナビーが問う。
対して虎徹もまた、柔らかく笑い返した。

「…見りゃ、分かんだろ」
「そうですけど…」
「んッ…あ…ばかッ…」
「あなたの口から直接聞きたい」

奥深くまで突き入れたまま、動きを止めたバーナビーは虎徹をぎゅっと抱き締めた。
完勃ちしたモノが自身とバーナビーの腹に挟まれて、思わず切羽詰まった声が漏れる。

「…やッ…バニー…イク…ッ」

我慢できずに白濁を吐き出せば、腹の中にじんわりとした熱が広がった。

(バニーもイったのか…)

同時に達したのだと思うと何だかちょっと嬉しくなる。
いまだ脈打つバーナビー自身を体の奥深くに感じながら、虎徹は彼の広い背中に手を回した。

こうして抱き合っている時は確かに幸せを感じられる。
一つになる喜び、愛し愛されているのだという実感に虎徹の気持ちは満たされる。

だが、しかし…。

ズルリと性器が引き抜かれた瞬間、それらはすべて姿形を変えてしまうのだ。
本当にこれでよかったのかという暗い罪悪感と後悔という名の後ろめたさに。





「なあ、お前はさ、後悔とかしてねえの?」

事後の気怠く甘い空気を楽しんでいたバーナビーは不粋な虎徹の一言に眉をひそめた。

「あの、質問がアバウト過ぎて答えられないんですけど」
「……」
「せめて何に対してのとか、言ってもらわないと…」
「そりゃあ、まあ…いろいろだよ」

自分で話を振っておきながら虎徹は視線も合わさず、口を噤んでしまう。
何かつまらないことを気に病んでいる時に彼がよく見せる態度だ。
気づかぬフリでバーナビーはわざと明るく言葉を返した。

「それって、僕の愛情の確認ですか?」
「っだ!そういうことじゃなくてだな。…いや、それも含めてだけど」

普段は他人のプライベートにでもズカズカと踏み込むくせに、いざ自分が踏み込まれる段になるとたちまち高い防御壁を作ってしまう。
そんな自分勝手な年上の男に少し意地悪をしたくなって、バーナビーもまた意味深な笑みを浮かべてみせた。

「そうですね…。後悔ならもちろん、散々しましたよ」
「…そうか」

途端に沈んだ声で目を伏せた虎徹の顔を両手で挟んで、自分の方に向けさせる。

「たとえば…一時とはいえ、あなたを忘れてしまったこと」

バーナビーの言葉が予想外だったのか、虎徹は驚いたように目を見開いた。

「そして、あなたをこの手で殺しそうになったこと」

黙り込んだまま何も言わない虎徹をそっとバーナビーは抱き締めた。

「でも、たった一つだけ後悔してないことがあります」
「…なん、だよ?」
「それはあなたと出会えたこと」

虎徹の唇から、バニー…と切ない声が漏れ、空気を震わせる。

「あなたと今こうして抱き合っていること、僕は後悔なんてしてませんよ」
「…バニー…」
「もちろん、あなたにもさせませんけど」

高らかに宣言するバーナビーがあまりにも自信たっぷりだったので、虎徹は思い悩んでいた自分が急にバカらしくなった。

「…やっぱハンサムは言うことが違うな」
「褒めても何も出ませんよ」
「いや、褒めてねーよ」

もう一度、互いに顔を見合わせる。
バツの悪そうな表情を浮かべる虎徹を安心させるかのように、バーナビーは額をくっつけ優しく笑いかけた。

「不安な時はいつでも確認してください。その度に僕はこう答えますから」

―愛しています、虎徹さん。

言葉だけでなく、軽く触れるだけのキスを虎徹に送る。
その数秒後、「俺も」という小さな声と共に照れ隠しのようなキスが返ってきて、たまらずバーナビーは虎徹の体をベッドに押し倒した。





 END


※このあと、めちゃくちゃSEXした…というオチです(笑)




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