短編
□嫉妬なんて俺らしくもない
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潜入捜査は俺の出番じゃない。
そんなことは分かりきってる。
けど、だからといってこの扱いの差はなんだ?
目の前ではバニーが普段、コンビであり相棒である俺には決して見せない気遣いを大盤振る舞いしている。
「折紙先輩、気をつけて。無茶だけはしないで下さいね」
それはいつもは自分の役割であり…。
バニーの言葉が俺の中の何かを苛立たせた。
「どうしたのよ?コワイ顔しちゃって」
ネイサンが驚いた様子で声を掛けてきた。
俺は表情を隠すように帽子のつばを引き下ろす。
「…なんでもねぇ」
「あら、イヤだ。あなた妬いてるの?」
ネイサンのその一言はストンと心の奥深くにはまり込んだ。
「珍しいわね。あなたがヤキモチだなんて」
途端に、カァーッと頭に血が上る。
「お、おい!そりゃ、勘違いってやつで、」
「いつもツレない相棒が他の人に優しくしてりゃ、さすがのワイルドタイガーもそりゃ腹立つわよねぇ」
「だーかーら、話聞けって!」
声を荒げてからハッと気付いて周囲を見渡す。
穴があったら入りたいとはこのことか。
ヒーロー仲間の視線が心なしか、冷たい…気がする。
「オジサン」
「な、なんだよ」
「ちょっと話があるんで付き合ってもらえますか?」
「…いいけど」
無表情なバニーからは感情が読み取れない。
半ばやけっぱちな気持ちで、俺はバニーの後に続いた。
(ああ、嫉妬なんて俺らしくない)
※11話より、たまにはオジサンも嫉妬する(笑)