長編

□しらじらと明けていく夜
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※短編で書いた話の長いバージョンです。過去捏造、モブ虎あるので苦手な方はご注意下さい。






きらびやかなライトに照らされたワイングラスが光を反射する。
グラスを重ね合わせる無機質な音があちこちで響き渡り、居心地悪そうに虎徹は手元のワインを飲み干した。
スポンサーを招いてのアポロンメディア主催の立食パーティーなど、本音を言えば遠慮したいところだ。
が、しかし、会社合併により職を失うところだったのを拾われた恩もあり、初のヒーローコンビとして売り出し中の身としてはそんな自分勝手な我が儘が通るはずもない。

窮屈なスーツに身を包んで、せめて期待の新人とやらの足を引っ張らないよう影を潜めて、ただ時間が過ぎるのを待つより他に今の虎徹に出来ることはなかった。

(期待の新人ねえ…)

社長のマーベリック直々に連れ回され、隣で営業用のスマイルを浮かべる派手なスーツ姿の若者をチラと見やる。
視線を感じたのか、いつも自分に向けられる小馬鹿にしたような眼差しを返され、虎徹は苦い笑みを浮かべた。

(兎のくせにホント可愛くねー)

虎徹自身、珍しく距離感を測りかねているなという自覚はあった。
バーナビーと名乗った青年は虎徹を古臭いと一蹴し、何かと反発してくる。
かと思えば、「他人の評価を気にしない」といったポリシーが同じだったりと似通った一面もあるというのに。






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