長編
□しらじらと明けていく夜5
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散々、虎徹をいたぶり、己の欲求を満たした男が彼を解放した頃にはすでにもう、日付は変わっていた。
久しぶりに無理を強いられた体は身じろぐことすら億劫だったが、一時も早くこの場を離れたくて虎徹は引きずるようにして浴室へと向かう。
「帰りは部下に送らせよう」
「…ありがとうございます」
背中に投げられた言葉にかろうじて礼を述べたものの、振り向くことすら今の虎徹にはできなかった。
再び、男の車の後部座席に乗り込んで深くシートに身を沈ませる。
深夜の道路は混雑もなく、自宅まではあっという間だった。
近くの路上に横付けされた車のドアが開き、虎徹が降りたのを確認するとそのまま静かに、車は走り去った。
ようやく我が家に帰り着いた安心感で、ホッとする。
何も考えずに今夜は眠ろうと、足早に玄関に向かった虎徹はそこに人影を見つけて立ち止まった。
(あれは…)
玄関のドアにもたれてこちらをじっと見ている金髪の若者は、今一番会いたくない人物だった。
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