長編

□しらじらと明けていく夜14
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バーナビーとの通話を切った虎徹は通い慣れたホテルの玄関口をくぐると、ロビーにあるカフェへと足を運んだ。
いつも男の車で往復するだけのホテルに、こんな憩いの場所があったのかと新鮮な気持ちでコーヒーを注文し、これからのことに思いを馳せる。

「会いたい」と虎徹が連絡を取ると、マートンは珍しいこともあるもんだと驚いたようだったが、満更でもない様子で急な呼び出しにも関わらず、快く応じてくれた。
後は自分の決意を伝えるだけだと、虎徹はコーヒーを飲みながらこうして男の到着を待っている。

やがて、玄関前に見慣れた黒塗りの車が横付けされ、開いたドアからマートンが姿を現した。



「急に呼び出したりしてすいません」

黒服の男にガードされながら目の前の席についたマートンに帽子を脱いで一礼すると、虎徹もまた腰掛けた。

「君から連絡をくれるなんて初めてのことだからね」

愛想良く笑みを浮かべた男の目が眇められる。

「で、用件は何だね?」

いきなり、そう切り出され、虎徹は思わず奥歯を噛みしめた。

「もう、こんな関係を止めたいんです」
「…言ってる意味が分からんな」
「あなたとの関係を終わらせたいって言ってるんです」

再度、繰り返された虎徹の言葉に、男の顔から笑みが消えた。

「私とのスポンサー契約を打ち切りたいと、そう言ってるのかね?君は」
「…そうです」

マートンは虎徹を冷たく見下すと、唇を歪めて冷酷な表情を浮かべる。

「もちろん、賠償金は払います!バーナビーに、って言うか、会社にバラすってんならそれでも構わない!」
「……で?」
「俺はもう、あなたとは寝ない」

虎徹は真正面から男を見据えて、キッパリと言い切った。









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