長編

□しらじらと明けていく夜15
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「よくここが分かったな」

いつまでもルナティックの消えた方角を見つめたままのバーナビーに、感心したように虎徹が声を掛けた。

「おかげさんで助かった。ありがとな」

いかにも虎徹らしい礼の言い様だったが、バーナビーはムッとした口調で素っ気なく返す。

「前にあなたの居場所を尋ねた時、このホテルの名前を言ってましたから。恐らくここかと…」
「へぇー、さすがはバニーちゃん!記憶力もよくてうらやましいわ」
「…ふざけないで下さい」

低い声で冷たく言われた虎徹は恐る恐る、バーナビーの顔を覗き込む。

「お前さ、もしかしなくても怒ってる…よな?」

バーナビーが何を怒っているのかまでは分からなくても、原因が自分であることは明白なのでとりあえず、虎徹は下手に出て様子を伺う。

「当たり前です。いきなりあんな電話をしてきたかと思ったら、一方的に言いたいことだけ喋って勝手に切るんですから」
「あ、そういやそうだな」
「おまけにこんな無茶して、僕がどれだけ心配したか分かりますか?」
「…悪かった、です」

言われてみれば全面的に自分が悪い。
そう理解した虎徹はしゅんとうなだれた。
もういい年をした大人の彼が年下の若者に説教されている姿を見て呆気に取られていたマートンだったが、ようやく我に返ってバーナビーの前に歩み出る。

「バーナビーくん、君は命の恩人だよ。ありがとう!」

満面の笑みでバーナビーに握手を求める男の姿に、虎徹は顔を背ける。









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