長編

□しらじらと明けていく夜16
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バーナビーの部屋のリビングにほんのりとチャーハンの焼けるいい匂いが漂ってくる。

「おーし!出来たぞ、待たせたな!」

得意気な声と共に、出来たてホカホカで湯気を立てているチャーハンを抱えた虎徹が上機嫌でやってきた。

「にしても、相変わらず殺風景な部屋だな。これ、一応テーブルに置いとくぞ」
「すいません」

二人分のチャーハンを置くと、虎徹は再びキッチンへと戻ろうとする。

「だけど、冷蔵庫の中身はちょっとはマシになったか。前はホントに何も無かったからな」
「ほとんど料理はしませんから」
「けどさ、チャーハンの材料は置いてんだな」
「え?」
「そんなに気に入ったんならレシピ教えてやろうか?」

そう言って、虎徹が悪戯っぽく笑う。

「か、からかわないで下さい!」

バーナビーは慌てて立ち上がると足早にキッチンへと向かった。

「冗談だって。怒んなよ、バニー」
「…飲み物はワインでいいですか?」
「チャーハンにはもったいないけど、お前んちのワイン美味いからなあ。ありがたく頂戴します」
「それと…」

ワインボトルとグラスを用意しながら、不意にバーナビーが虎徹に尋ねた。

「今日は僕の家に泊まります?」
「へっ?」
「もし、自宅に帰るというのなら僕はアルコールは控えますが」
「で?また俺を家まで送ってくれんの?」
「ええ、そのつもりです」

真面目に答えるバーナビーに思わず、虎徹は苦笑する。

「俺が飲もうって誘ったんだぞ。変な気は使うな。あ、それとも泊まるのは迷惑だったか…」
「いえ、そういうわけじゃ、」

少し考え込んだ虎徹が静かに口を開いた。









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