長編

□しらじらと明けていく夜17(R)
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カチャカチャという、スプーンと食器の触れ合う味気ない音があっという間に止んでしまうと二人は行儀よく手を合わせた。

「ごちそうさまでした」
「はー、食った、食った!」
「片付けは僕がやりますから、いいですよ」
「そっか〜?」

バーナビーはそう言うと、重ねた食器を手に持ち立ち上がった。

「あ、おじさんは先にシャワーでも浴びてゆっくりしてて下さい」
「おう、分かった…て、へ!?」

(今あいつ、何つった?シャワーって!?)

去り際のバーナビーのセリフが引っ掛かる。
変な下心は感じさせなかったけど、と虎徹はしばし固まったまま動けなかった。

(俺が意識しすぎて、変なこと考えてるだけなのかな…)


「おじさん?」
「はい!?」
「何やってるんですか?」

悶々と考え込んでいるうちに戻ってきたらしいバーナビーに、まるで不審人物を見るような目つきで見咎められて虎徹はバツが悪そうに目を逸らした。

「何、緊張してるんです?今さら怖じ気付いたんですか?」
「俺は別に、」
「ちなみに、さっきの答え聞いてませんけど」
「答えって?」
「やり直したいと言ったら、僕を許してくれますか?」
「……」

迷いを宿した琥珀色の瞳がようやくバーナビーの翡翠の色と重なる。

「あなたの優しさは嫌いじゃないですけど。イヤならイヤ、無理なら無理とはっきり言ってくれる方が僕にはありがたい」
「あー、分かった!イヤじゃねーし、無理じゃねー!」

だから困ってんだよ…と頭をガシガシ掻きむしる虎徹の脳裏に『ほんとアンタ達ってメンドクサいわねえ』と言ったネイサンの言葉が蘇る。









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