長編

□POWER OF JUSTICE(後編R)
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※引き続きモブ虎描写あります。苦手な方はご注意下さい。










―強くなりたい。
大切なものを守るために、そのために力が欲しい。
心からそう思った。






「ん…あぁ…」

潤んだ瞳に薄く開かれた唇、物欲しそうに揺れる腰は男の動きに合わせて上下している。

「どうだ?気持ちいいだろ?」

男のモノで内壁を擦り上げられた虎徹がヒィッ、と掠れた声で鳴いた。

「…き…もち、いい…です」

与えられた薬によって崩壊した自我は、目の前のバーナビーさえ認識しなくなっている。
恐らく、虎徹は無意識に今の状況をマートンとの接待にすり替えているのだろう。

「だいぶ、とんでしまってるようだな」

侮蔑を含んだ男の言葉にバーナビーが冷静さを取り戻す。
見たくないのに彼の痴態から目が離せない。
視線で人が殺せるなら、今頃目の前の男達は即死しているだろう。
それほど、バーナビーの怒りは激しかった。

「今の君も、そして彼も、とてもヒーローの顔とは思えないな」
「……」
「ああ、彼に使った薬のことなら心配はいらない。即効性がある割に、効果はそれほど長くはないから」

聞いてもいないのにベラベラと話す男もまた、興奮を隠せないようで情欲のこもった目で虎徹を見つめている。

「お前は参加しないのか?」

もう、そろそろ能力が戻ってもいい頃合いだ。
バーナビーは男の気を逸らすため、あえて質問を投げかける。

「まだ死にたくはないからな」

意味の分からない答えが帰ってきたが、バーナビーにとってはどうでもよかった。




「もっと…お…くに…」

媚びを売る言葉に男達の口元がにやける。
虎徹の体を貪る彼らもまたリーダー格の男同様、時間の感覚が頭から消え失せているようで、自らの快楽を得ることに夢中になっている。

(まだ、か…)

すでに抵抗の無くなった虎徹の手錠は外されている。
焦るバーナビーの目の前で、血にまみれた傷だらけの手が虎徹自身に伸ばされた。

「おっと、まだ足りねーのかよ」
「あッ!」

男がその手をひねり上げると、泣きそうな表情で虎徹が男を見上げた。

「はなせ…よ…イかせて…」

ふと思いついたように、男がバーナビーを見た。

「そうだ、お前の相棒のバーナビーにイかせてもらったらどうだ?」

無理やり顔を向けられて、ゆっくりと琥珀色の瞳がバーナビーを捕らえる。

「…バー、ナビー…?」
「そうだ。お前の相棒だよ。忘れちまったのか?」
「あ…、バ…ニー…」

バニー、と虎徹がその名を何度も繰り返すうちに、焦点の合わなかった瞳が次第に正気を取り戻し始める。

「…あ、あ、…や…」

状況を把握した虎徹の表情が見る見るうちに強張っていった。

「み、みる…な!…バニー、見ないで…くれ!」

溢れる涙が幾筋も頬を伝う。
突然暴れ出した虎徹に驚いた男達は、慌てて彼を押さえつけた。

「はなせ!おれに…さわるな…!」

叫ぶ虎徹に手を焼いた男が彼を殴りつけ、大人しくさせようとする。

「…ッ!やめろ!それ以上、その人に手を出すな!」

バーナビーの体の芯が怒りに震える。
もう、限界だと思った。
これ以上は耐えられないとそう思った時、ようやく全身が発光し、能力が発動した。


「貴様らァー!」

一瞬で拘束を解いたバーナビーは側の男を一撃で沈めると、虎徹を取り囲んでいた連中へと突っ込む。
青白い光はまるで彼の怒りを表すかのように、静かに激しく燃え盛っていた。

「ヒィッ!」

悲鳴を上げて逃げ惑う男達を殴りつけ、蹴り上げる。

「た、助けてくれ!」

常軌を逸した攻撃に、所詮は一般人の彼らは地面に頭をなすりつけ、許しを請うた。

「…今さら、命乞いか」
「お前、ヒーローなんだろ?だったら、」
「だったら、何だ?」

冷たく返された言葉と共にバーナビーが男達になお、制裁を加えようとしたその時だった。

「よせ!バニー!」
「オジサン…!」

虎徹の制止の声にバーナビーは動きを止めた。
理不尽な暴力から解放され、まだ自由に動かない体を無理に起こした虎徹が、静かに彼を見つめている。

「そいつらの言うとおり、お前は…ヒーローだ」
「でも!こいつらはあなたを、」
「なあ…バニー、お前のその手は誰かを傷つけるためのものじゃない…。救うためにあるんだ」

振り上げた拳がゆっくりと下ろされて、バーナビーは床を殴りつける。

「くそッ!」
「バニー…」
「あなた一人も守れずに、何がヒーローだ!」
「…バニー…!」

名を呼ばれて近づいたバーナビーは虎徹の悲惨な状態に、思わず目を逸らす。
そして自らのライダースジャケットを脱ぐと、彼の体を覆い隠した。

「…軽蔑、したか?」
「なにを言って…?」
「マートンさん、なんだろ?…わりぃな、お前を巻き込んじまった…」
「オジサン…」

そうだ、自分よりも虎徹の方がツラいのだと思い直してバーナビーはぐっと唇を噛み締めた。


「助けてくれて、ありがとな」

弱々しい笑みを浮かべながら掠れた声で礼を言う虎徹に、すいません、と小さく返したバーナビーはただ彼を強く抱き締めた。




その後、逃げられないよう男達を縛り上げると、バーナビーはリーダー格の男が所持していた携帯から電話を掛けた。

「もしもし、僕です」
「…君が掛けてきたということは私の計画は失敗に終わったということかな?」
「ええ、なので後始末をお願いします」

冷たく用件を告げるバーナビーに一瞬、男が息を飲む。

「…承知した」
「それから、今後こういう真似は止めて頂きたい」
「ふん…考えておこう」

プツンと切れた電話を床に落とすと踏み潰す。
同じように、ビデオカメラなど証拠として残りそうな物は全てバーナビーが消滅させた。
あとは…。
ここに残された男達だが、恐らくそれはマートンがキレイに片付けてくれるだろう。

虎徹は散らばった衣服を身に付けると、バーナビーを振り返る。

「とりあえず、行きましょう」

てっきりバーナビーが警察に連絡を入れていると思っていた虎徹は、彼の言葉に首を傾げた。

「警察が来るんじゃ…」
「とにかく、安全が確認出来るまでは僕の家にいて下さい」

そう言ってバーナビーは彼を抱き上げると、外にあった男達の車で家路を急いだ。

「着くまで眠っていていいですよ」
「ん、ほんと…ありがとな、バニー」

抜けつつある薬の影響がまだ残っているのか、ほんのりと上気した顔を晒したまま虎徹は静かに目を閉じた。
疲れ切った頬には涙の跡が残る。





「オジサン、僕は…」


強くなりたいと願った。
大切なものを守るために、そのために力が欲しいと、生まれて初めて心の底から、バーナビーはそう思った。











※バニーちゃんがちょっぴり黒い…けど、とりあえず終わった。いろいろすいませんでしたf^_^;


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