捧げものと企画文

□彼氏と彼氏の恋愛事情(R)
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※リク主様へ捧げます





「バーナビー・ブルックス Jr.の場合」





最近、僕には気になることがある。
それは…。

「んじゃ、お疲れさん」
「お疲れ様でした」

仕事上の同僚であり、コンビを組んでいる相棒の虎徹さんのことだ。
何が気になるのかと聞かれれば説明しづらいのだが、ここ最近彼の態度がどうにもおかしい。

ぶっちゃけて言うと、虎徹さんの僕に対する態度が以前と比べてひどく素っ気ないのだ。
前はこっちが適当にあしらってもうるさいくらい構ってきたのに、今は決まりきった挨拶か仕事関係の話しかしてこない。
それどころか、不意に話しかけたりすると思いっきり挙動不審になる始末で。

誤解の無いよう言っておくが、本来僕は他人からの干渉は苦手だ。
プライベートに口出しするなと、あの人に何度も念押ししたことだってある。

だから生活ペースを崩されることがない今の状況は、むしろ僕にとっては喜ばしい状態のはずなのだ。
なのに…。
この胸の中にポッカリ穴が開いたような物足りなさは何だ?
このモヤモヤとした気持ちはいったい何なんだ?

「はあ〜」

大きなため息をつきながら自棄酒を飲む。
虎徹さんに出会ってからというもの、僕の心はいつも落ち着かなくてイライラさせられっ放しで。

ましてや、こんなにも他人に振り回されるのは初めての経験で戸惑うことばかりだ。

「‥やっぱり僕はあなたが嫌いだ」

最終的にそう結論づけた僕はシャワーを浴びると、早々にベッドに潜り込んだ。






その夜、僕は夢を見た。


『バニー、俺さ』

虎徹さんが何やら改まった様子で話しかけてくる。

『どうしたんです?えらく真面目な顔をして』

こんな風にあの人の方から声を掛けてくるなんて最近では珍しいことだ。
つい嬉しくて身を乗り出した僕をチラリと見て、虎徹さんは言いにくそうに目を伏せた。

『お前とのコンビ解消しようと思うんだ』
『えっ!?』

寝耳に水とはまさにこういうことを言うんだろう。

『な‥んで、どうして?』
『お前とはやっていけない。もう無理なんだ』

衝撃から立ち直れないでいる僕を置き去りに、虎徹さんは淡々と話を続ける。

『バニーだって気づいてんだろ?最近、俺がお前のこと避けてるの』
『それは…』
『お前が俺のこと嫌いなのは知ってる。それでも昔はさ、そのうち分かり合えるんじゃないかって、そう思ってた』
『虎徹さん‥?』
『でも最近気づいたんだ。そんなの絶対あり得ないって』

脳内に警戒音が鳴り響く。
これ以上は聞きたくないと、本能が僕に告げる。

『だって俺も、お前のことが嫌いなんだから』

続けられた彼の言葉に、後頭部を鈍器で殴られたような衝撃が再び僕を襲った。

…嫌われてたのか、僕は。

腹の底が冷え、苦いものがこみ上げてくる。

『虎徹さん!』

とっさに出た声は裏返り、自分でも情けないほど震えていた。

『…コンビ解消して、それであなたはどうするんですか?』
『そんなの、お前には関係ないだろ』

迷惑そうに吐き捨てた彼は僕からそんな事を聞かれるとは思ってもみなかった、と言わんばかりの口振りだ。

―あなたは本当に、コンビを解消すれば僕が喜ぶとでも思ってるんですか?

そう聞いてやりたいのに声が出ない。

『だって、俺たち互いに嫌いあってるのに上手く行くわけがない』

―そんなの、勝手に決めないで下さい!
僕があなたを嫌いだなんて、そんなの、そんなの…。

そう伝えたいのに言葉にならない。
夢なら早く覚めればいい、そう思った時

『サヨナラ、バニーちゃん‥』

いつもの笑顔を浮かべて、虎徹さんが僕に別れを告げた。

―いやだ!いやだ!あなたと別れるのはいやだ!

『そんなのいやだ!』
『バニー?』

ようやく思いが声になる。
まだ、間に合うだろうか。

―だって、僕は‥。

『あなたが好きなんです!』

叫んだ瞬間、虎徹さんの困ったような顔が僕の瞼に焼き付いた。






「虎徹さん!!」

唐突に目覚めが訪れて、ガバッと布団をはねのけた僕は荒い息を吐いた。

「ハアハア‥」

全身を冷たい汗が流れ落ちる。

「僕は虎徹さんが好き‥なのか?」

『だって俺も、お前のことが嫌いなんだから』

ふと先の夢のセリフが蘇り、喪失感に肩が震える。
嫌いだと告げられた瞬間の胸の痛みは、大切な何かを失った時の痛みによく似ていた。

「いやだ。あなたを失いたくない!」

夢と現実の狭間を漂ったまま、僕は上着を引っ掛け部屋を飛び出した。
自分の本当の気持ちに気付いた今、やるべきことは決まっている。

はやる心のままに、僕は愛車のアクセルを強く踏み込んだ。





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