本屋パロシリーズ

□鏑木書店へようこそ!
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※パラレル設定でオジサンは本屋さん、バーナビーは高校生





カランカラン、と来客を告げるベルの音に、虎徹はレジ横で座り込み読みふけっていた本から顔を上げた。

「いらっしゃい」

腕時計で時間を確認するとまだ午前11時を少し回ったばかり。
街の小さな本屋に客の来る時間帯ではなく、虎徹は思わず店の入り口に目を向けた。
すると、学生服姿の青年がキョロキョロと店内を見回している。

(見かけない顔だな‥)

制服は近所の高校のものだが、その青年はいつも見かける生徒達ではない。
明るい金髪に澄んだ翡翠色の瞳、スラリと長身の彼はとても目立つ容姿をしていて一度見れば忘れるはずがないと思ったからだ。
神経質そうな手つきで眼鏡の縁を上げた青年は、参考書の置かれた書棚の前に立つと、手に取り中を見始めた。

その様子を眺めていた虎徹は不意に後ろから手を伸ばし、一番上の棚から一冊選び取る。

「そっちより、これの方が解りやすいと思うんだけど」

瞬間、警戒心丸出しの表情で青年は目を細めた。

「‥自分で探しますから」

抑揚のない声でそう言うと、彼は手元に視線を落とす。
意外な反応に虎徹は目をぱちくりさせてから肩を竦めた。

「ところで君さ、学校は?」

再び話しかけられ、嫌々といった風に青年が虎徹を見る。

「別にお説教するつもりはないけど、ちゃんと授業には出た方が、」
「お節介はやめてもらえますか」
「へっ?」
「余計なお世話だって言ってるんです」

端正な顔に似合わぬ辛辣なセリフに、今度こそ虎徹は言葉を失った。

カランカランと再び入り口のドアが開く音がする。

「待たせたね」
「いえ‥」

スーツ姿の男に声を掛けられた青年は静かな笑みを浮かべた。

「行こうか、バーナビー」
「はい」

バーナビーと呼ばれた青年は一度虎徹を振り返り、無言のまま男の後に続いて出て行った。

手の中の参考書を戻しながらさっきの青年に向けられた視線を思い出す。

(なんつーか、毛を逆立てた猫っつーの?)

まるで、己の領域に踏み込むなと言わんばかりの冷たい眼差しに逆に虎徹の興味がそそられた。
もとより、自分がお節介な人間だと彼自身も自覚はしている。

「バーナビー、か‥」

また会えるかな、そう呟くと虎徹はレジ横の定位置に腰掛け、読みかけの本を取る。
パラパラとページを捲る音が響いた後に、やがて店内に静けさが戻った。







※もしかしたら、続き書くかもしれませんf^_^;


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