長編

□君と歩きたい
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最初に感じた違和感はごくごくわずかなものだった。
ハンドレッドパワーの力加減が微妙にコントロールできなかったり、能力切れのタイムリミットがいつもよりコンマ何秒か早かったりと、指摘されなければ本人ですら気付かないほどの些細なものだったからだ。
『最近、何か変わったことはないかい?』
「変わったこと?いやあ、絶好調ッスよ!」
『どこか具合の悪いところがあるとか?』
「…はあ?」
スーツ点検の際にメカニックの斎藤に体調を聞かれ、虎徹は訝しげな表情を浮かべた。
「何なんッスか?んな回りくどい言い方止めて下さいよ」
斎藤は彼らしくない、いつになく神妙な顔付きで虎徹を見ている。
『気になるデータが出てるんだ』
「気になる…データ?」
『まだ今は調査中だから、君も何か変わったことがあれば知らせて欲しい』
「ふーん。分かりました、了解!」
そんなやり取りをして数日後、コンビとしての仕事を終え、報告を済ませて退室しようとした虎徹をロイズが呼び止めた。
「虎徹君、ちょっと君に話があるんですが」
「はい?」
「ああ、バーナビー君は行ってくれて構わないよ」
同じく立ち止まったバーナビーにロイズはニッコリ笑みを送る。
また小言でも始まるのだろうと肩を竦めると、一礼してバーナビーは部屋を出た。
「あのう、俺なんかしましたっけ?」
恐る恐る切り出した虎徹を一瞥し、ロイズがおもむろに口を開く。
「率直に言わせてもらうと…君も年だし、そろそろ引退とか考えてもいいんじゃないかと」
「ちょ!ちょっと待って下さい!」
予想だにしなかった上司の言葉に虎徹は慌てふためいた。
「いきなり何なんですか!俺はまだまだ引退なんて…」
「君の体が」
「…?」
「ハンドレッドパワーの能力をセーブ出来なくなってきている」
衝撃的な発言内容に虎徹が言葉に詰まる。
「君も薄々気づいていたはずです。能力を使う際の違和感に」
「!?」
確かにロイズの言うとおりだった。
己の体の変化に自身が気付かない訳がない。
「長年、能力を酷使してきた副作用のようなものだと斎藤君は言っていましたが」
俯いた虎徹にロイズは淡々と語り続ける。
「もし、万が一君がその能力を制御出来なくなった場合、一般人に危険が生じる恐れがあります」
それはヒーローである彼にとって絶対に避けたい最悪の事態だ。
「…俺にヒーローやめろってんすか?」
「そういうことですね」
ふと、脳裏に相棒のバーナビーの顔が浮かんだ。
「…少し、考えさせてもらってもいいですか?」
「構いませんよ。君も気持ちの整理が必要でしょうから」
黙って頭を下げると、虎徹もまた部屋を後にした。


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