長編

□笑ってたいんだ
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「ああ、とても似合ってましたよ」
ここ最近見せるようになった優しい笑みを浮かべて、相棒のバーナビーはしれっと返した。
その答えに納得いかない虎徹がすかさず噛みつく。
「おまっ、ふざけんな!そりゃ、お前はいいよ。カッコよく『ハィ!ポーズ!』って感じでさ」
「あなたもあんな水着で撮影したかったんですか?」
「いや、そうじゃなくてだなあ…」
「僕は楽しいですよ」
不意にバーナビーが窓の外に目をやる。
「今までと景色が違って見えるっていうか、復讐のために生きてきた頃とは別物みたいなんです」
柔らかい笑みと口調でそう言われると、虎徹はもう何も言えなくなった。
長い間、縛られていた復讐という鎖からようやく解き放たれた彼はまるで生まれたばかりの雛鳥のように虎徹を慕っている。
その心情を思いやると、何だか切なくなって虎徹はそっと目を伏せた。
「虎徹さん」
「ん?」
「この後、何か予定ありますか?」
遠慮がちに訊ねてくるバーナビーも昔の彼からは想像もつかないし
「よかったら、僕の家に来ませんか?」
こんな風に彼からお誘いが頂けるとは、思ってもみなかった。
「…そうだな。たまにはお前に付き合うか」
虎徹がそう答えると、バーナビーはホッとしたように彼の手を取って足早に歩き始めた。




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