長編

□笑ってたいんだ
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虎徹の振る舞う手料理を食べ終え、しこたまアルコールを飲んだ二人はバーナビーの寝室へと移動した。
慣れた仕草でベッドの上に寝転る。
男二人が寝ても十分なサイズのそのベッド上で、既に彼らは何度か体を重ねていた。
「昼間の撮影の件ですけど」
虎徹を見下ろす体制で、バーナビーが唐突に口を開いた。
「…んだよ?」
「本当はあなたにも僕と同じ水着が用意されてたんです」
「はあ!?」
虎徹のリアクションが予想通りだったのだろう。
バーナビーは口元を歪め、笑いを堪えた。
「でも、僕が断りました。別のにして下さいってね」
「おま…、で、俺はそのせいであんなみっともない格好をする羽目になったって訳だ」
「そういうことです」
拗ねたように頬を膨らませる虎徹を見つめながら、バーナビーはゆっくり、彼へと手を伸ばした。
「これ以上、ライバルを増やすのは嫌だったんで」
そして、右手で柔らかな肌に触れる。
「…言ってる意味が分かんねーんだけど」
くすぐったそうに逃げを打つ体を抱き寄せて、バーナビーは耳元に唇を寄せる。
「あなたは自分の魅力にまるで気付いてない」
あなたのこの体を見ていいのは僕だけです、そう囁くとバーナビーは虎徹に口づけた。
「んっ…」
「今日は泊まっていって下さいね」
命令口調で年下の相棒が告げる。

(こんなとこは変わってないんだな)

ぼんやりとそんなことを考えながら、虎徹もまた、自分を抱く男の背に腕を回した。



続く
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