長編

□笑ってたいんだ 6
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「大丈夫ですか?」

目の前でフェイスマスクを上げたバーナビーが右手を差し出す。
その手につかまりながら、虎徹はゆっくりと立ち上がった。

「お前こそ…無茶しやがって」
「らしくないって言いたいんでしょ」

虎徹もまたマスクを上げ、不機嫌な表情で彼を見返す。

「あなたのおかげで助かりました」
「あれは、あれは俺がやったのか?」
「でしょうね。少なくとも、僕の力じゃない」

戸惑うように見つめた手の平の光は既に失われていた。

「…ジェイクのバリアみたいだったな」
「新たな能力の発現ってことなのか?」
「それは調べてみないと分かりませんが…」
「ん?」
「カッコよかったですよ、虎徹さん」

ファンの女の子が見れば絶叫しそうな優しい笑みを浮かべて、バーナビーが虎徹を見つめる。

「ばっ、バカ野郎!」

その笑みが心の底からのものだと分かるから、虎徹もいつものようにかわすことが出来ない。

「これでしばらく引退出来なくなりましたね」
「…ああ、だといいな」
「ヒーロー続けて下さい」

『あなたはどんな時でもヒーローでいて。約束よ』

バーナビーの声に不意に、亡くなった妻の友恵の言葉が重なった。

「ったく、どいつもこいつも…」

楓に何て言い訳すりゃいいんだとボヤく虎徹の声は震えていたが、それでも彼の口元に浮かぶ笑みを見てバーナビーは安堵のため息を漏らすのだった。





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