長編

□しらじらと明けていく夜4(R)
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『もしもし、おじさん?聞こえてますか?』

ぐ、と唇を噛み締めた虎徹は覚悟を決めてようやく口を開いた。

「わりィ、バニー…ッ‥あとでかけ直す、から」

会話の最中にも男は容赦なく虎徹の中を抉り続けてくる。
荒い息を何とか整えて、ようやくそれだけ答える と通話を切るよう、目の前の男に訴える。
しかし、マートンはそんな虎徹をただ黙って見下ろすだけで動こうとはしなかった。

『おじさん?何かあったんですか?』

珍しく、バーナビーの声に焦りの色が混じっている。

「なんでも…ねぇ‥」

これ以上は限界か、とマートンは携帯を取り上げた。
それに、変に勘ぐられてこんな風に楽しめなくなるのは彼の本意ではない。

「もしもし、ちょっと彼は悪酔いしててね。ちゃんと仕事に支障がないよう送っていくから心配はいらない」
『では、あの…』
「ああ、あとでかけ直すよう、私からも彼に言っておくよ」



じゃあ、と一方的に切られた電話を見つめるバーナビーの口からため息が漏れた。
電話の相手は恐らく、会場で虎徹と話していた男なのだろう。
しかし、なぜ彼が他人である虎徹の着信に勝手に出たのか?
電話口の様子からあの相棒の身に何か異変が起きていることは確実なのに、ただ彼からの連絡を待つしかないのか?


(ああ、本当にあの人には振り回されっ放しだ!)


苛立ちをぶつけるように車のキーを引ったくると、バーナビーは立ち上がり足早に部屋を出た。







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