長編

□しらじらと明けていく夜7
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「あのね、アタシもどっちかっていうと古株だからタイガーとの付き合いも長いわけ。でね、彼がデビューして2年目ぐらいだったかしら?ちょうど壊し屋ってイメージが定着した頃ね」

当時を思い出すように人差し指を顎に当て、ネイサンが静かに語り続ける。

「それまでバカみたいに明るかった彼がやけに暗く、落ち込んでた時期があったの。もちろん、あんな性格だから他の人には悟らせないよう振る舞ってたんだけどさあ」
「原因は分かったんですか?」
「それがサッパリ」

首を振り、ネイサンは深いため息をついた。

「それから何年かして、また元のタイガーらしさを取り戻したみたいだったから安心してたんだけど…。ここ最近の彼がまた、あの頃のような空気を纏ってるからちょっと心配してんのよ」

なるほど、とバーナビーは表情に出さずに内心密かに納得する。
と同時に、虎徹の抱えている問題の深刻さに驚いていた。

(これは一筋縄ではいきそうにないな)

恐らく、虎徹が落ち込んでいた時期に先日のような夜の接待が行われていたのは間違いないだろう。
もし、その相手があのパーティーで見かけた男と同一人物だったとしたら。
どんな事情でかは知らないが、一度は関係を断った男が再び虎徹に接触してきたのだ。
そいつはかなり、虎徹に執着心を持っていると考えていいだろう。

「タイガーってね、他人にはお節介なくせに構われるのが苦手なのよ」

己の思考の世界に入り込んでいたバーナビーはネイサンの言葉に顔を上げた。

「ああ、まるっきり正反対ね」
「何がです?」
「ハンサムとタイガーよ。アナタは構われるの嫌いって顔してるけど、本心では人との交わりを望んでる。でもタイガーは違う。フレンドリーに見えて、本当に孤独なのは彼の方かもしれないわね」
「…!」
「あら、図星だったかしら?」

バーナビーの動揺を悟ったように、ネイサンが目を細める。

「そんな訳ないでしょう」

吐き捨てるようにそう言うと、バーナビーは勢いよく立ち上がった。








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