長編

□しらじらと明けていく夜9
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「くそっ、気づいてやがったのか!」
「気づいてないとでも思ってたのかい?おマヌケさん」

男の嘲笑にカッとなった虎徹が殴りかかる。
だが、それを簡単にかわすと男は右手を虎徹へとかざして見せた。

「どうした。能力を使わないのか?」
「うるせー!お前なんざ、能力使わなくても捕まえてやるよ!」

挑発に乗せられてはいけない、ハンドレッドパワーを使うのは最終手段だと自分に言い聞かせ、虎徹もまた身構える。

「思ったより冷静なんだな。ワイルドタイガー」
「…!」
「なら、こちらからゆくぜ!」

男のかざした右手から光の玉のようなものが現れたかと思うと、次の瞬間、虎徹の体に衝撃が走った。

「ガッ!アァッ!!」

何が起こったのか分からないまま、廃墟の壁に叩きつけられた体がズルズルと地面に崩れ落ちる。

「…ぐ…うぅ…」

能力発動していない彼は一般人とさほど変わらない。
身に纏うスーツがかろうじて致命傷を負うことだけは避けてくれたようだ。

(斎藤さんに感謝だな…。だが、アバラをやられたか…)

息をする度に痛む胸を押さえながら、ゆっくり虎徹は立ち上がる。

「もう一度、食らってみる?」

男の手の上で、再び光が集まり始めた。

「…そいつが、お前の能力か?」
「そう。僕は光をエネルギーの塊にする事が出来るんだ」

これでお終いだ、ワイルドタイガー!と叫んで右手から光が放たれる。
虎徹もまた、能力を発動しようとした時、目の前を見慣れた背中が遮った。






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