長編
□しらじらと明けていく夜12
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「そう…なのか」
「おじさん?」
「いや、てっきり俺は嫌われてるもんだとばかり思ってたから。そっか、俺の勘違いか…」
よかった、と呟いた虎徹が見せた明るい笑顔に一瞬、バーナビーはドキリとした。
(まただ…。本当に僕はどうかしているのかもしれない)
だけど。
「どうした?」
「いえ、そんな風に笑うあなたを見たのは久しぶりだなと思って…」
「そっか?」
バーナビーの言葉にまた、虎徹が笑う。
柔らかい笑みはまるで自分の犯した罪さえ許すかのように、温かく心を満たしていった。
(あなたを責める資格などないのは分かっているけど…)
「あ、送ってくって言ってくれんのは嬉しいんだけど、ほんとに大丈夫だから」
「ここまでは車で?」
「いや、違うけど」
「なら、やっぱり僕の車で送ります。少し話したいこともあるので」
いつものような人を見下し小馬鹿にした態度とはまるで違う、バーナビーの真摯な申し出を虎徹が断れるはずもなく。
困ったように目尻を下げながらも、彼は最終的にその親切を受け入れた。
そしてバーナビーもまたそれが、そうすることでバーナビーの気が済むのならという、虎徹流の配慮だと気付いていた。
虎徹の優しさは、一度受け入れてしまえば心地がいい。
復讐のため、己を律するように生きてきたバーナビーにとってその感情は無用のモノのはずだというのに。
(今までの僕からは考えられないことだ…)
そう、鏑木・T・虎徹という人物に出会うまでは。
「行きましょうか?」
「悪いな」
バーナビーに促され、虎徹は大人しく後に従った。
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