長編

□しらじらと明けていく夜13
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「もしもし?」
『あ、バニー?帰ったばっかのとこ悪いな』
「いえ、それより何かありました?」
『んっと…今、ちょっと話してもいいか?』

会話が噛み合わないのはいつものことだが、どこか歯切れの悪い虎徹の物言いがバーナビーは気になった。

「かまいませんけど、話ならさっき別れる前に直接してくれたらよかったのに」
『う…だから、たった今決めたんだよ』
「何をです?」
『こないだ、お前に言われたことの答えだ』

ぐっと一瞬、息が止まった。

『やっと覚悟を決めた』
「おじさん…?」

次に彼の言う言葉は予想出来たが、それでもバーナビーの胸の鼓動は速くなる。

『あのスポンサーとは手を切る。で、これからは一切、んな真似はしねえ』
「…そうですか」
『お前に言われて、目が覚めたんだ。ありがとな、バニー』
「いえ、僕は何も」

受話器の向こうで深く息を吸い込む気配がして、虎徹が再び口を開いた。

『あの人と知り合ったのは俺がデビューして2年目くらいだったかなあ』

まるで思い出話でも語るような軽い口調で、虎徹は自らの過去を話し始める。

『正義の壊し屋なーんて言われて賠償金がかさんでさ。ある時、壊したビルのオーナーに会いたいって言われて、一度だけの約束でああいう関係持っちまった。俺も若かったんだなあ。一度だけ、なんて言葉を信じたんだからな』
「……」
『そしたら、うっかり写真なんて撮られちまってよ。会社に迷惑掛けらんなかったし、何よりヒーロー止めたくなかったから…。後はお前も知っての通りだ。確かに金の心配は無くなったが、ズルズルと4年もの間、俺はあいつとその、体の関係ってやつ?そんなもん持って…ほんと、今思えば俺は馬鹿だったよ』

懺悔のような虎徹の独白を聞き終えたバーナビーは、ハアと溜め息をついた。








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