長編

□しらじらと明けていく夜13
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「ほんとにあなたは馬鹿です」
『おまっ、んなストレートに、』
「なぜもっと早く、僕に相談してくれなかったんです?」
『…』
「相棒を信頼してくれない人をどうやって信用しろって言うんですか?」
『ごめん…』

黙り込んでしまった虎徹に、少し言い過ぎたかとバーナビーは口元を上げる。

「少しは反省してます?僕の気持ちが分かったでしょ、おじさん?」
『ったく、どいつもこいつも俺ばっか責めやがって。あー、悪かったよ。これからは相棒をちゃーんと信頼します!』
「そう願いたいですね…」

拗ねる年上の男の表情が電話越しに伝わってくるようで、バーナビーは微笑した。
それにしても、虎徹にとっては触れたくない過去だっただろうに。

「なぜ…」
『あぁ?』
「なぜ、そんな話を僕に?」
『なぜって…、そりゃお前、それこそ相棒だからだろ。それに、さっきも言ったようにお前のおかげっつーか』

痛みを伴う過去をバーナビーに話すことで、虎徹は彼への信頼を示し、そして自分への逃げ道を閉ざしたのだろう。
そう気付いたバーナビーもまた、虎徹の意志を受け止める覚悟を決める。

『という訳でだ。今から話してくるわ』
「は?」
『だから、ケリを付けてくるっつってんだよ』
「ちょ、ちょっと待って下さい!今からって、」
『善は急げって言うだろ?全部片が付いたら報告すっから、じゃあな』
「おじさん!ちょ、」

一方的にまくし立てられた挙げ句、ツーツーという通和音に切り替わった携帯をバーナビーは呆れたようにじっと見つめた。
気持ちが吹っ切れた虎徹の、らしい行動だと言えばそれまでなのだが。
肝心の相手がそんな話し合いに応じるかと言われれば、恐らく「否」だ。

(まったく、また考えもなしに!)

相手の男の情報はバーナビーの方が十分知り尽くしている。
虎徹を信頼していない訳ではないが、なぜか嫌な胸騒ぎがして仕方なかった。

虎徹のことを馬鹿だと言ったのは自分だ。

(でも、そんな馬鹿をほっとけない僕は大馬鹿だな)

彼の意志を受け止めると決めたのだから、最後まで付き合うしかないかと苦笑して、バーナビーはソファーから立ち上がり部屋を出た。









続く
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